セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

クローン病-小腸

タイトル 消P-253:

炎症性腸疾患における血清抗HSP60/70抗体価の臨床応用についての検討

演者 森崎 智仁(長崎大大学院・消化器病態制御学)
共同演者 磯本 一(長崎大大学院・消化器病態制御学), 横田 伸一(札幌医大・微生物学), 赤澤 祐子(長崎大大学院・消化器病態制御学), 山口 直之(長崎大大学院・消化器病態制御学), 宮明 寿光(長崎大大学院・消化器病態制御学), 田浦 直太(長崎大大学院・消化器病態制御学), 大仁田 賢(長崎大大学院・消化器病態制御学), 市川 辰樹(長崎大大学院・消化器病態制御学), 竹島 史直(長崎大大学院・消化器病態制御学), 中尾 一彦(長崎大大学院・消化器病態制御学)
抄録 【目的】Heat-shock protein(HSP)は炎症や感染などのストレスに対して細胞内で速やかに合成される分子シャペロンであり、ストレスから細胞を守る細胞防御機構として働いている。細胞の生命維持のためにHSPは必須の蛋白質であるが、HSPに対する自己免疫応答の異常が、様々な自己免疫疾患の発症や増悪の原因の一つと考えられている。炎症性腸疾患でもHSPやそれに対する自己抗体が発症や病勢に関わっている可能性がある。我々は、炎症性腸疾患患者における血清抗HSP60抗体と抗HSP70抗体価を測定し、その結果から診断への応用性について検討を行った。
【方法】クローン病(CD)患者32人と潰瘍性大腸炎(UC)患者26人、健常人22人について血清抗HSP60/70抗体価をELISA法にて測定し比較検討した。統計にはKruskal-Wallis test(事後比較にはScheffe test)とMann-Whitney U test、判別分析を用いた。いずれもP<0.05を統計学的有意と判定した。
【結果】CDの血清抗HSP60/70抗体価は、いずれもUC、健常人と比較し有意に高かった(P<0.01)。UCと健常人では差を認めなかった。CDの両抗体価は病勢、病悩期間、病変範囲、治療内容における差を認めなかった。両抗体価を用いてCDとUCの判別分析を行ったところ、判別係数は抗HSP60抗体が24.12で抗HSP70抗体は8.62であった(P<0.01)。誤判別確率は8.66%であった。
【結論】血清抗HSP60/70抗体価がCDのみで特異的に高値を示していた。両抗体価の組み合わせはCDの診断補助やUCとの鑑別に有用となる可能性がある。CDとUCが鑑別困難な場合には、血清ASCAとpANCA測定を用いた鑑別法が報告されているが、血清抗HSP60/70抗体が、新たなCDの診断マーカーとなる可能性が示唆された。
索引用語 クローン病, 抗HSP抗体