セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

クローン病-小腸

タイトル 消P-254:

IgA糖鎖構造に基づく炎症性腸疾患の診断と予後予測

演者 井上 隆弘(大阪大大学院・消化器内科学)
共同演者 飯島 英樹(大阪大大学院・消化器内科学), 白石 衣里(大阪大大学院・消化器内科学), 日山 智史(大阪大大学院・消化器内科学), 向井 章(大阪大大学院・消化器内科学), 中島 佐知子(大阪大大学院・消化器内科学), 新崎 信一郎(大阪大大学院・消化器内科学), 西田 勉(大阪大大学院・消化器内科学), 三善 英知(大阪大大学院・消化器内科学DELIMITER大阪大大学院・機能診断科学), 辻井 正彦(大阪大大学院・消化器内科学), 竹原 徹郎(大阪大大学院・消化器内科学)
抄録 【背景】炎症性腸疾患(IBD)のマーカーには感度・特異度ともに優れたものはなく、新たなバイオーマーカーの確立が急務である.我々はIgG糖鎖の異常がIBD鑑別に有用であることを報告したが,IgA糖鎖については検討されていない.【目的】IBDにおけるIgA糖鎖構造を解析し,疾患鑑別や予後を予測するマーカーとしての有用性について検討した.【対象および方法】Crohn病(CD) 32例,潰瘍性大腸炎(UC)30例,健常者(HV)30例,感染性腸炎(DC)17例を対象とした.患者血清よりIgAを精製し,ヒンジ領域におけるO結合型糖鎖の構成要素であるGalactose,GalNAcの付加数を質量解析器(MALDI-TOF MS)にて解析した.【結果】IgAヒンジ部あたりのGalNAc付加数(GalNAc/HP)は,CDにおいてUC,HV,DCに比して有意に低値で(p<0.01),UCもHVに比して有意に低値であった(p<0.05).GalNAc/HPと臨床所見の相関をみると,CDAI≧150,CAI≧7,Montreal B2+B3において有意に低値で(p<0.05),疾患活動度や病型が悪化に伴いGalNAcの付加は低下していた.またGalNAc/HP 4.50を疾患マーカーのCut off値とすると,CD 81%,UC 30%,HV 0%,DC 11%で陽性となり,CDとHVの鑑別能は,従来のマーカーであるASCAよりROC解析において優れていた.次に,インフリキシマブ(IFX)による治療を行ったCD患者10例で治療前後での糖鎖変化をみると,IFX後6週時はIFX前に比して有意にGalNAc/HPが上昇し(p<0.05),糖鎖の付加が改善していた.また,GalNAc/HPの上昇を認めなかった2例については,早期再燃を来す傾向が認められた.【結論】IBDにおいてIgA O結合型糖鎖のGalNAcが低下しており,疾患鑑別や予後を予測するマーカーとなりうることが示唆された.(共同研究者 : 大阪大大学院・老年腎臓内科学 岩谷博次,猪阪善隆  大阪府立母子保健総合医療センター研究所 和田芳直)
索引用語 IgA, 糖鎖