セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

クローン病-小腸

タイトル 消P-255:

IBD患者における風疹・麻疹・水痘・ムンプスに対する抗体価測定の意義

演者 長沼 誠(東京医歯大・消化器内科)
共同演者 長堀 正和(東京医歯大・消化器内科), 藤井 俊光(東京医歯大・消化器内科), 秋山 純子(東京医歯大・消化器内科), 齋藤 詠子(東京医歯大・消化器内科), 渡辺 守(東京医歯大・消化器内科)
抄録 【目的】風疹・麻疹・水痘・ムンプスは小児に好発する疾患でありワクチンにて予防可能な感染症であるが、近年大学生を中心として麻疹が流行し社会的問題となった。IBD患者では免疫調節薬、抗体製剤を使用する機会が多いが、これらの治療時では生ワクチンは禁忌であるため、ワクチン接種が必要な際には治療中断やワクチン接種の断念を余儀なくされるなどの問題が生じる。これまでIBD患者の各種感染症の抗体価を検討された研究はほとんどない。今回IBD患者における風疹・麻疹・水痘・ムンプス抗体価を測定しワクチン接種のタイミングについて考察を加えた。【方法】2011年1-3月に当院通院中の IBD患者115名(UC62、CD50、他3名、男女比73:42、対象年齢16-77歳)を対象に血清抗体価IgGをEIA法にて測定し、抗体価4以上を陽性、2-4を判定保留、2未満を陰性と判定した。臨床背景(年齢・性別や治療法)と抗体価陰性率との関連について検討した。【結果】抗体測定時の主な治療はステロイド10例、免疫調節薬62例、抗体製剤48例であった。陰性・判定保留率は水痘5例(4%)、麻疹7例(6%)、風疹22例(19%)、ムンプス43例(37%)であった。水痘・麻疹の陰性者は大部分が10-20代患者であり、また35歳以下の女性7例で風疹抗体価が陰性・判定保留であった。免疫調節薬・抗体製剤使用の有無による抗体価陰性率の違いは認められなかったが、免疫調節薬使用62例中31例(50%)、抗体製剤使用・既使用例59例中31例(53%)でいずれかの抗体価が陰性・判定保留であった。【考察】今回の検討により成人IBD患者の中で免疫調節薬・抗体製剤使用例において一定の割合で抗体価陰性の症例が存在することが確認された。成人発症では重症化・不妊の問題、妊娠時感染による先天性風疹・水痘症候群の問題があること、さらに近年免疫調節薬・抗体製剤を早期に使用する症例が増えていることより、IBD患者では診断後早期に抗体価を測定し結果によりワクチン接種を検討することが必要であると考えられた。
索引用語 炎症性腸疾患, 感染症