セッション情報 一般演題

タイトル 30:

麦芽大麦(GBF)のみで長期間緩解状態が得られている左側結腸型潰瘍性大腸炎の1例

演者 尾上 剛士(社会保険中央総合病院)
共同演者 近藤 健司(社会保険中央総合病院), 浜田 勉(社会保険中央総合病院), 斉藤 聡(社会保険中央総合病院), 須崎 愛(社会保険中央総合病院)
抄録 症例は47歳男性。1994年下血で発症した潰瘍性大腸炎(UC)の患者。当院初診時(1999年)排便回数4回/日で下血あり、下部消化管内視鏡検査(CF)にて左側結腸型UCの所見であった。1999年3月寛解導入目的に入院。入院時便通3~4回で下血あり、採血ではWBC 10600、CRP 0.1であった。第28病日のCFでは直腸に炎症の残存を認めた。絶食、IVH管理、サラゾピリン(SASP)内服、SASP注腸、ベタメタゾン注腸、プレドニゾロン(PSL)40mgからの内服開始したところ、食事摂取下で便通2~3回/日・下血なしと緩解状態が得られ退院した。退院後PSL中止した。さらにベタメタゾン注腸とSASPの減量を行おうとしたが、減量すると再燃するため中止できない状態であった。2001年7月再燃時に発芽大麦(GBF)の投与を開始した後、緩解状態が得られ同年12月CFでも緩解期の所見となっていた。その後ベタメタゾン注腸中止、SASPも減量→中止でき、GBFのみで緩解維持が得られていた。GBFを自己判断で中断したところ再び便回数増加、下血も認めたためGBFを再投与し再び寛解状態となった。その後現在まで2年以上GBF単剤で緩解状態が続いている。GBFは元来、健常者の便通改善を目的に開発された。ラットUC類似モデルにGBFを投与したところ下痢、血便が改善されたため、中等症以下のUC患者に便通回数改善の効果が期待され臨床応用されている。GBFの主な作用機序は、1:酪酸による粘膜防御作用 2:NF-κB(nuclear factor-κB)の活性化低下による抗炎症作用 3:水分保持能の増強による便性改善 4:グルタミンによる小腸粘膜保護作用が考えられている。GBFの副作用は一過性の腹部膨満感の他、ほとんど認められない。本例はGBFのみにて長期緩解維持が得られており、GBFの作用機序の何かがUCに対し有効であるものと想定される。UCの病因を考える上で示唆に富む症例と考え報告する。
索引用語 GBF, UC