セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
21:著明な腹腔内遊離ガス像を呈し高濃度酸素療法にて治療した腸管気腫症の一例
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演者 |
中本 伸宏(水戸赤十字病院 内科) |
共同演者 |
市川 理子(慶応義塾大学病院), 山岸 由幸(慶応義塾大学 医学部 消化器内科), 杉野 吉則(慶応義塾大学 医学部 放射線診断科), 斎藤 英胤(慶応義塾大学 医学部 消化器内科), 日比 紀文(慶応義塾大学 医学部 消化器内科) |
抄録 |
症例:80歳男性。主訴:下痢、体重減少。家族歴:特記すべきことはなし。既往歴:76歳時より緑内障、77歳時に前立腺癌を指摘されホルモン療法を継続中。喫煙、飲酒の習慣、手術歴はなく、有機溶媒などを扱う特殊な職歴もない。現病歴:2004年3月より心窩部痛を自覚したため近医入院の上、腹部骨盤CT、上部消化管検査を行ったが異常所見なく投薬のみで退院となった。同年4月下旬より、下痢、体重減少を認めるようになり、同年8月に眼科通院中である当院消化器内科に入院となった。入院時腹部所見上、ガス貯留に伴う膨満を認めたが、自発痛、圧痛はなく、その他身体所見上も特記すべき所見はなかった。血液検査上も末梢血、生化学、凝固、腫瘍マーカーを含めて異常所見を認めなかったが、胸腹部単純レントゲンにて両側横隔膜下の遊離ガス像、著明な大腸、小腸ガスの貯留を認めた。その後の腹部骨盤CTでも同様に腹腔内、後腹膜に大量の遊離ガス像を認めたが腫瘍病変などは指摘されず、また発熱、腹膜刺激症状もなく腸穿孔に伴う腸管ガスの遊離、腹膜炎は否定的であった。腹部レントゲン、CTにて精査の結果、腸管壁内に線状のガス貯留を認め腸管気腫症に特徴的な症状・所見と考えられた。入院後、腹腔内ガスの増加、腹部膨満感の増悪を認めたため、文献的に有効とされる高濃度酸素療法を開始した。治療開始後、自覚症状は改善、画像上も遊離ガスの減少を認め、徐々に投与酸素量を減量していった。治療開始14日後には横隔膜下遊離ガスはほぼ消失したため酸素投与を中止した。治療終了後も症状の再燃を認めなかったため退院となった。現在も消化器内科外来で症状なく通院中である。なお退院時に施行した注腸検査では異常所見は認められなかった。結語:今回大量の腹腔内遊離ガス像を認め腸穿孔との鑑別を要したが、臨床症状、画像所見にて腸管気腫症と診断し、高濃度酸素治療にて改善を認めた興味深い一例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。 |
索引用語 |
腸管気腫症, 高濃度酸素療法 |