セッション情報 パネルディスカッション3(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝炎-重症・難治例の現状と対処法

タイトル 肝PD3-1:

自己免疫性肝炎急性期症例の早期診断の重要性

演者 阿部 雅則(愛媛大大学院・地域医療学)
共同演者 眞柴 寿枝(愛媛大大学院・先端病態制御内科学), 恩地 森一(愛媛大大学院・先端病態制御内科学)
抄録 【目的】 自己免疫性肝炎(AIH)は通常ステロイドが奏功し、その予後は良好である。しかし、急性肝炎期例では急性肝不全に移行すると予後不良となる。今回、当科で経験したAIH急性肝炎期例の臨床像を中心に、早期診断の有用性について解析した。【方法】組織学的検索を行い急性肝炎と診断したAIH 31例。ステロイド投与前に肝生検を行った症例の肝組織像を解析した。また、関連病院との間で重症肝炎・肝移植診療についての連絡体制(愛媛重症肝炎ネット)を構築し、当院では入院早期に自己抗体測定と肝生検を行っており、その有用性についても解析した。【結果】1) 急性肝炎期 31例の血清IgG値は2000mg/dl以下が19例(61.3%)だった。抗核抗体(ANA)は陰性が5例(16.1%)、低力価(80倍以下)が17例(54.8%)だった。ビリルビン10mg/dl以上の14例のうち7例が死亡または肝移植を行った。また、PT 40%以下の8例では内科的治療での生存は2例のみだった。ビリルビン10mg/dl以下、PT 40%以上の症例ではANA陰性・低力価の割合が多かった。2) 肝組織像ではzone 3 necrosisがみられる以外に、中等度の門脈域の浮腫性拡大と炎症細胞浸潤が25%でみられた。形質細胞浸潤も半数の症例で観察された。3)最近5年間に当科に紹介された急性肝炎期AIHは10例。8例は生存、2例は入院時すでに高度黄疸があり、1例は劇症肝炎に移行し感染症合併で死亡、1例は当院肝胆膵移植外科との連携により生体肝移植で救命した。生存した8例は、全例が紹介時にビリルビン10mg/dl以下、PT 50%以上だった。ANA陰性3例、IgG 2000mg/dl以下5例と診断困難な症例もあったが、入院早期に肝生検を施行して治療を開始したところ、全例がステロイドに反応した。そのうち6例は同ネットからの紹介だった。【結語】自己免疫性肝炎急性期症例では、適切な連携体制の確立と組織学的検索を含めた早期診断が重要である。
索引用語 自己免疫性肝炎, 急性肝炎