セッション情報 |
ポスターセッション(消化器病学会)
大腸-基礎1
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タイトル |
消P-288:酸化ストレスと選択的スプライシングのクロストーク
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演者 |
黒川 憲(徳島大大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部・ストレス制御医学) |
共同演者 |
棚橋 俊仁(徳島大大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部・ストレス制御医学), 六反 一仁(徳島大大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部・ストレス制御医学) |
抄録 |
【背景と目的】局所での酸化ストレスの亢進は、炎症の造悪や細胞増殖への関与が示されているが、その詳細は不明である。選択的スプライシングに関わるsplicing factor, arginine/serine-rich 3(Srsf3)遺伝子は、酸化ストレスに応答してそれ自身が選択的スプライシングをうけ、異常終止コドン(PTC; premature termination codon)を含むSrsf3 PTC variantを発現することを確認している。PTCを含む異常mRNAは、品質管理機構であるナンセンス変異mRNA分解(NMD; Nonsense-mediated mRNA decay)で通常は分解される。酸化ストレスに応答するSrsf3 PTC variantの発現様式と細胞内局在を解析した。【方法と結果】mRNAの転写阻害で、酸化ストレスに応答するPTC variant mRNAの安定性は増加した。さらに、酸化ストレス下ではNMDの基本構成因子であるUpf1の発現も低下していた。間接的なNMDの阻害とUpf1の抑制による直接的なNMDの阻害で、PTC variantの発現増加が認められた。以上から、酸化ストレスによりNMDが阻害され、PTC variantのmRNAは分解をまぬがれたと考えられる。イムノブロットでSRSF3の細胞内局在を解析すると、非ストレス下ではSRSF3は核に存在するが、酸化ストレスに応答して細胞質で検出された。共焦点レーザー顕微鏡の観察で、この細胞質のSRSF3は顆粒を形成し、さらにTIARと共局在し、ストレス顆粒に局在すると確認した。次いでSrsf3とPTC variantの過剰発現系で局在を検討した。SRSF3は、酸化ストレスに応答して核から細胞質へ移行し、ストレス顆粒に局在した。PTC variantからもtruncated SRSF3が翻訳されることを見いだした。非ストレス下でもtruncated SRSF3は細胞質で顆粒状に存在するが、この顆粒の詳細は不明である。【結論】酸化ストレスによるNMD阻害で、Srsf3 PTC variantのmRNAは選択的にスプライシングされ、truncatedタンパク質へ翻訳され、ストレス顆粒で機能を持つ可能性が示された。酸化ストレスと選択的スプライシングとのクロストークが示唆される。 |
索引用語 |
選択的スプライシング, 酸化ストレス |