抄録 |
【目的】急性発症した自己免疫性肝炎(AIH)症例の肝組織所見を含めた臨床的特徴について検討した。【対象・方法】当科にて臨床的にAIHと診断された82例中35例が急性発症例であり、内訳は急性肝炎期8例,急性増悪期27例であった。この2群における検査データ,肝組織所見,診断時スコアおよび治療法について検討した。【成績】(1)急性肝炎期8例を検討すると平均年齢52±14.8歳で全例女性であった。ALP:AST/ALTは全例1.5未満で、グロブリン比1未満例が5例(62.5%)であった。抗核抗体陰性例が2例で、8例中6例がHLA-DR4陽性であった。肝組織所見ではA1/A2/A3: 2/3/3で、中心静脈周囲の肝細胞壊死所見を認めたのは8例中7例(87.5%)であった。治療前スコアは、1999年の基準(旧基準)では確診1例,疑診7例で、2008年の基準(新基準)では確診例はなく、疑診1例,基準外7例であった。7例にステロイド(CS)を使用して6例は著効を得た。(2)急性増悪期27例を検討すると平均年齢56.7±16.3歳で男女比は4:23であった。ALP:AST/ALTは全例1.5未満で、グロブリン比1未満例が5例(18.5%)であった。抗核抗体陰性例が3例で、HLAは検索した18例中14例でDR4陽性であった。肝組織所見ではA1/A2/A3:9/12/6, F1/F2/F3/F4:11/9/3/4であった。治療前スコアは、旧基準では確診16例, 疑診11例であり、新基準では確診 15例, 疑診5例, 基準外7例であった。22例にCSを使用したが、1例はCS漸減中に再燃を認め、AZT追加投与にて寛解した。(3)急性肝炎例を急性増悪例と比較するとAST/ALT値,グロブリン比以外に有意差はなく、組織学的検索を行わない限り鑑別不可であった。【結論】AIH急性発症例の確定診断には可能な限り早期の組織学的検索が不可欠であり、特に急性肝炎期例では中心静脈周囲の肝細胞壊死所見が有用であると考えられた。また、急性発症例の治療にはCSが第一選択であり、再燃例にはAZT追加投与が望ましいと考えられた。 |