セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸-基礎2

タイトル 消P-293:

ラパマイシンにて誘導される制御性T細胞は移入腸炎モデルを抑制する

演者 荻野 治栄(九州大・病態制御内科)
共同演者 中村 和彦(九州大・病態制御内科), 岩佐 勉(九州大・病態制御内科), 井星 陽一郎(九州大・病態制御内科), 牟田 和正(九州大・病態制御内科), 向井 康二(九州大・病態制御内科), 村尾 寛之(九州大・病態制御内科), 麻生 暁(九州大・病態制御内科), 秋穂 祐唯(九州大・病態制御内科), 高柳 涼一(九州大・病態制御内科)
抄録 【背景】炎症性腸疾患の発症には腸管での免疫制御異常が関与しており、分子標的薬を含め様々な治療法が開発されているが、まだなお難治性の病態が存在する。そこで、我々は新規治療薬として移植後の免疫抑制に使われているラパマイシンに着目した。ラパマイシンはin vitroやin vivoにて免疫反応を制御する制御性T細胞(Treg)を誘導することから、炎症性腸疾患への応用が期待される。【方法】まず、DSS腸炎に対してラパマイシンを連日腹腔内投与し、体重を測定した。次に、in vitroでラパマイシン存在下にCD4+ T細胞を培養し、Tregの比率をフローサイトメトリーにて解析した。最後に、ラパマイシン存在下培養CD4+ T細胞の治療効果を検討するため、ナイーブCD4+ T細胞移入大腸炎モデルで評価した。6-8週齢のBalb/cマウスからナイーブCD4+ T細胞を分離し、ラパマイシン存在下培養CD4+ T細胞とSCIDマウスに移入した。体重、便の性状を観察し、腸炎発症後2-3週間で安楽死させ、大腸の重さ/長さの比率、組織学的評価、サイトカイン産生(real time RT-PCR, 粘膜固有層単核球に対する細胞内染色、ELISA)を評価した。【結果】ラパマイシン腹腔内投与はDSS腸炎を改善しなかっただけでなく、コントロールと比べ有意に体重減少し、致死率も高かった。ラパマイシン存在下でCD4+T細胞を培養すると、3週間で細胞数は8倍に増加し、Tregの比率も40%に上昇した。ラパマイシン非存在下の培養ではTregの比率は15%程度であった。ラパマイシン存在下培養CD4+ T細胞は大腸炎を抑制し、Th1反応とTh17反応の一部を抑制した。【結論】ラパマイシン存在下培養CD4+ T細胞は移入大腸炎モデルを抑制した。今後、炎症性腸疾患にラパマイシン存在下で培養増殖したTreg移入療法が期待される。
索引用語 ラパマイシン, 制御性T細胞