セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸-基礎2

タイトル 消P-295:

マウス実験腸炎モデルにおけるメタロチオネインの役割

演者 辻 俊史(京都府立医大・消化器内科)
共同演者 内藤 裕二(京都府立医大・消化器内科), 高木 智久(京都府立医大・消化器内科), 寄木 浩行(京都府立医大・消化器内科), 山田 真也(京都府立医大・消化器内科), 春里 暁人(京都府立医大・消化器内科), 水島 かつら(京都府立医大・消化器内科), 平井 泰子(京都府立医大・消化器内科), 堅田 和弘(京都府立医大・消化器内科), 内山 和彦(京都府立医大・消化器内科), 石川 剛(京都府立医大・消化器内科), 半田 修(京都府立医大・消化器内科), 小西 英幸(京都府立医大・消化器内科), 八木 信明(京都府立医大・消化器内科), 古倉 聡(京都府立医大・消化器内科), 市川 寛(京都府立医大・消化器内科), 柳澤 利枝(環境省国立水俣病総合研究センター), 鈴木 純子(国立環境研究所・環境健康研究領域), 高野 裕久(国立環境研究所・環境健康研究領域), 吉川 敏一(京都府立医大・消化器内科)
抄録 (背景)原因不明のクローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の病態解明,ならびに新規治療標的分子の探索は重要な研究課題である.これまでに我々は炎症腸管粘膜における新規治療標的分子の探索を目的としてマウス実験腸炎モデルを用いた網羅的遺伝子発現解析を行い,炎症腸管粘膜において発現変動する遺伝子の一つとしてMetallothionein(MT)に着目するに至った.MTは構成アミノ酸の約1/3がシステイン基を有する強力な生体内抗酸化蛋白質であると考えられているが,腸管炎症における役割は明らかではない.本検討ではマウス実験腸炎モデルを用いて腸管炎症におけるMTの役割について検討を行った.(方法)7週齢雄性MT欠損マウスおよび同週齢雄性野生型マウスに対して,既報に従い2, 4, 6-trinitrobenzene sulfonic acid(TNBS)腸炎を作成した.腸炎については,形成された潰瘍の評価を含むclinical score,体重減少度,myeloperoxidase(MPO)活性,各種炎症性サイトカイン発現を測定し評価した.また,健常大腸粘膜,クローン病患者の炎症大腸粘膜でのMTの発現も検討した.(結果)野生型マウスではTNBS投与によってclinical score上昇が認められたが,MT欠損マウスでは有意にclinical scoreの亢進を来たし,体重減少が観察された.好中球浸潤による腸管炎症の指標であるMPO活性もMT欠損マウスで有意に亢進しており,病態進展とともに発現亢進する各種サイトカインもMT欠損マウスで有意に増加していた.またクローン病患者における炎症腸管粘膜でのMTの発現も亢進していた.(考察)MT欠損マウスにおいてTNBS腸炎は野生型マウスと比較し有意に増悪し,腸管炎症の進展においてMTは重要な組織保護作用を発揮している可能性が示唆された.さらに,MTは炎症性腸疾患における新規治療標的分子としての可能性が示唆された.
索引用語 メタロチオネイン, TNBS