セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸-基礎2

タイトル 消P-297:

炎症性腸疾患の栄養療法としての中鎖脂肪酸の有用性の検討

演者 河野 寛(山梨大・1外科)
共同演者 大菊 正人(山梨大・1外科), 原 倫生(山梨大・1外科), 藤井 秀樹(山梨大・1外科)
抄録 【目的】われわれは、これまで中鎖脂肪酸(MCT)投与による消化管の免疫増強効果と、抗炎症性作用を報告してきた。一方、ω-3系脂肪酸の炎症性腸疾患における有用性が報告されている。そこで今回、MCTならびにω-3系脂肪酸の炎症性腸疾患に与える影響を、ヒトクローン病の炎症性腸疾患動物モデルを作成し比較検討した。【方法】雄性Wistar種ラットに、MCT非含有ω-6系脂肪酸高含有栄養剤(A群)、MCT非含有ω-3系脂肪酸高含有栄養剤(B群)、MCT含有ω-3系脂肪酸高含有栄養剤(C群)を2週間投与した後に、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)を注腸し、炎症性腸疾患動物モデルを作成した。TNBS投与5日後に大腸を採取し、大腸の炎症の程度を病理組織学的に検討。また、大腸組織の炎症性サイトカインならびにケモカインの発現をELISA法により検討した。【結果】結果:抹消血中のエンドトキシン、TNF-α、IL-1β値はA群、B群、C群の順に高値を呈していた。また、TNBS投与により大腸組織でのTNF-α、IL-1β、MIP-2、MCP-1の発現は増加し、A群でその発現がもっとも強く、C群で最も抑制された。また、大腸組織でのミエロペルオキシダーゼ活性もC群で最も低値であった。その結果、TNBS誘発大腸炎はA群でもっとも増強し、C群において最も軽減され、また、B群とC群の間には炎症の程度に有意差を認めた。まとめ:ω-3系脂肪酸はω-6系脂肪酸と比較し、炎症性腸疾患改善効果を認めた。さらに、MCT非含有ω-3系脂肪酸高含有栄養剤と、MCT含有ω-3系脂肪酸高含有栄養剤の比較検討より、MCTの抗炎症効果がω-3系脂肪酸と比較し、より優れている事実が明らかとなった。【結論】炎症性腸疾患の栄養療法としてのMCTの有用性があらためて明らかとなった。
索引用語 炎症性腸疾患, 中鎖脂肪酸