セッション情報 パネルディスカッション3(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝炎-重症・難治例の現状と対処法

タイトル 肝PD3-3:

自己免疫性急性肝不全についての考察

演者 藤原 慶一(千葉大大学院・腫瘍内科学)
共同演者 安井 伸(千葉大大学院・腫瘍内科学), 横須賀 收(千葉大大学院・腫瘍内科学)
抄録 【目的】HBVキャリア急性増悪・劇症化例と自己免疫性肝炎(AIH)急性発症・劇症化例の非移植救命率は20%以下で、劇症肝炎の中でも最も予後不良である。この2年間の厚労省全国調査における内科的救命率はそれぞれ0/29 (0%)、2/15 (13%)であった。今回、自験例の急性発症型AIHについて総括した。【方法】2000-2012年に経験した急性発症型AIH例を対象として、臨床病理学的検討を行なった。AIHの診断は臨床的特徴、抗核抗体(ANA)あるいは抗平滑筋抗体(ASMA)陽性、矛盾しない組織所見、国際AIHスコア (1999)に基づいて総合的に行なった。急性発症例は慢性肝障害の既往がなく、臨床画像診断学的に急性肝炎として矛盾しないものに限定し、極力急性増悪例を除外した。重症型はPT 50%以下あるいはT-Bil 20mg/dl以上を満たすものとした。【結果】対象症例は73例(非重症43例、重症16例、劇症14例)。非重症・重症の全例と劇症の2例が内科的に生存し、重症化・劇症化した時点での内科的救命率はそれぞれ60%・14%であった。劇症例では非重症例よりIgGとANAは有意に高値であった。組織像は劇症例では90%以上が急性肝炎像を呈し、非重症例より有意に多かった(p=0.02)。発症から入院・組織学的検索までの期間は各群間で有意差を認めなかった。急性肝不全例ではheterogeneous massive necrosisを反映する画像所見が診断・治療反応性の評価に有用であった。【結論】非重症例には急性増悪例も含まれているのに対して、急性肝不全例のほとんどは急性肝炎例であった。急性肝不全例の重症度は時間経過より組織学的進展度に依存していた。自己免疫性急性肝不全例の内科的救命率を改善するために最も重要なことは、亜急性の経過で急性肝不全に陥る前の非重症肝炎のうちに早期診断し免疫抑制療法等により肝炎の鎮静化をはかることである。劇症肝炎例では当初から肝移植を第一に考え、免疫抑制療法の反応性評価を行ないつつ、反応不良の場合には感染合併症が生じる前(免疫抑制療法開始2週間以内)に速やかに肝移植を施行できるようすべきである。
索引用語 自己免疫性肝炎, 急性肝不全