セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸-基礎4

タイトル 消P-307:

大腸癌におけるH3K9脱メチル化酵素KDM4Cの発現異常とその意義の検討

演者 山本 信三(東京大・消化器内科)
共同演者 立石 敬介(東京大・消化器内科), 工藤 洋太郎(東京大・消化器内科), 山本 恵介(東京大・消化器内科), 浅岡 良成(東京大・消化器内科), 伊地知 秀明(東京大・消化器内科), 砂河 孝行(東京大医科学研究所・先端医療研究センター), 油谷 浩幸(東京大医科学研究所・先端医療研究センター), 小池 和彦(東京大・消化器内科)
抄録 【目的】ヒストン修飾及びその異常の悪性腫瘍の表現型への関与を示唆する報告が相次いでいる。一方ヒストン修飾プロファイルはそれぞれの細胞系譜ごとに様々であり、生物学的特性におけるヒストン修飾が及ぼす影響の分子メカニズムを明らかにするには腫瘍細胞系譜ごとの詳細な検討が必要である。KDM4Cは元来GASC1として報告され食道癌細胞での増幅から同定された遺伝子である。この遺伝子によりコードされる分子がヒストン脱メチル化活性をもち、その抑制が食道癌細胞の増殖を抑制するという知見も報告されている。今回我々は大腸癌細胞におけるH3K9脱メチル化酵素KDM4Cの発現異常とその意義を検討した。【方法】1.大腸癌臨床検体を用いてKDM4Cの癌部、非癌部における発現を検討した。2.発現の高い大腸癌細胞においてKDM4Cの安定ノックダウン細胞株を樹立し表現型を解析した。【結果】大腸癌細胞株においてはKDM4Cの遺伝子増幅は認められなかったが、同一症例の大腸癌部と非癌部の発現を比較すると、癌部における発現上昇が認められた。その高発現が大腸癌細胞に及ぼす意義を明らかにするため、特に発現の高い大腸癌細胞においてKDM4Cの安定ノックダウン細胞株を樹立し、その表現型解析を施行した。食道癌細胞の場合と異なりKDM4C発現抑制による増殖能への影響は認められず、同時に遊走能にも変化を示さなかったが、一方でin vitroにおける腫瘍形成能がKDM4C抑制によって低下した。ノックダウン細胞にKdm4Cを発現させることでその表現型が回復すること、また膵癌細胞株でのKDM4Cノックダウンでも同様の表現型がみられたことから、この表現型はKDM4C分子に特異的な現象であると考えられた。現在この表現型における責任標的遺伝子をマイクロアレイから抽出しそのメカニズムの詳細を検討中である。【結論】H3K9脱メチル化酵素KDM4Cは大腸癌の腫瘍形成能に関与する可能性が示唆された。
索引用語 KDM4C, ヒストン修飾