セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸-基礎4

タイトル 消P-308:

IBD腸管炎症に関わる炎症性サイトカインによるEGF-C末端signalを介した大腸癌細胞増殖機序- HB-EGF-CTFシグナル抑制薬網羅的探索から-

演者 尾関 啓司(名古屋市立大大学院・消化器・代謝内科学)
共同演者 谷田 諭史(名古屋市立大大学院・消化器・代謝内科学), 城 卓志(名古屋市立大大学院・消化器・代謝内科学)
抄録 【目的】炎症性サイトカイン(IL-8)は、潰瘍性大腸炎の慢性炎症と関連し、colitic cancer の増殖・進展に重要な役割を果たしている。IL-8は、メタロプロテアーゼ (ADAM10)を活性化後、上皮増殖因子受容体(EGFR)リガンド(HB-EGF)を切り出すと同時に、HB-EGF C末端(CTF)を核移行させ、転写抑制因子(PLZF)を核外にくみ出し細胞増殖を誘導する。HB-EGF-CTF核移行阻害薬が新たな癌治療戦略になり得ると考え網羅的探索を行い、候補薬の細胞増殖抑制効果を調べた。【方法】HB-EGF-CTFとPLZFとの結合を抑制する薬剤探索のため6000種類の化合物をAlpha Screen systemを用い網羅的にスクリーニングした。大腸癌細胞株(HT-29・HCT116細胞)を使用した。細胞増殖能を細胞増殖カーブ、MTS assayにて検討した。HB-EGF-CTFおよびPLZF細胞内局在を蛍光免疫染色にて調べ共焦点レーザー顕微鏡でも観察した。EGFRのリン酸化、HB-EGF-CTFとPLZFの結合を免疫沈降で確認した。【結果】HB-EGF-C末端とPLZFとの結合を抑制する薬剤(sartans)を見出した。IL-8による細胞増殖抑制効果は、Candesartanに比べTelmisartanの方が強く、HB-EGF-CTF核移行およびHB-EGF-CTFとPLZFの結合は、Telmisartanのみで阻害できた。共にEGFRリン酸化は阻害しなかった。【結論】Telmisartanは、HB-EGF-CTF核移行を抑制し、細胞増殖抑制作用を持ち新たな癌治療戦略になりうる薬剤と考えられた。
索引用語 HB-EGF-CTFシグナル, 大腸癌細胞増殖機序