セッション情報 パネルディスカッション3(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝炎-重症・難治例の現状と対処法

タイトル 肝PD3-4:

急性発症型自己免疫性肝炎の早期診断と治療介入

演者 海老沼 浩利(慶應義塾大・消化器内科)
共同演者 齋藤 英胤(慶應義塾大・薬学部薬物治療学), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科)
抄録 【背景と目的】本邦における自己免疫性肝炎(AIH)の多くは慢性の経過を辿りステロイド治療に良好に反応する症例が多いが、中には急性に発症し肝不全へと移行する予後不良の症例が存在する。この急性発症型自己免疫性肝炎(AAIH)は自己抗体陽性や高IgG血症といった典型的特徴を呈さず、さらには凝固能低下のため組織学的検索が行えず、早期診断ができないことが多い。さらに、急性肝不全へと移行すると致命的な経過を辿ることから、今回我々はこのAAIHの早期診断と強力免疫抑制療法による治療介入の有効性を検証することを目的とした。【対象と方法】2000年から2011年に経験したAAIH(慢性型の急性増悪を除く)44例をその検査所見、診断、治療、最終転帰に付き比較検討した。また、診断時の血清が利用可能であった症例につき、その免疫学的機序をBio-PlexTMサスペンションアレイシステムによりサイトカインを測定し検討した。【結果】AAIH症例の中で25例が急性肝不全に定義された。平均年齢は46.9歳で女性に多く、劇症肝炎8例、LOHF 2例、非昏睡型15例という内訳であった。2例を除きすべて亜急性で、発症から治療開始までは平均23.8日を要していた。AAIHでは抗核抗体は28%で陰性で、IgG値は52%で基準範囲内であったが、反対にCT上肝萎縮が76%に、地図上パターンが80%に観察された。これらの症例では肝生検は治療前に施行できず、原因不明例として治療したケースも多かった。当院では重症例ではTNF-αやMCP-1といった高サイトカイン血症を伴っているという臨床データに基づき、PSLパルス療法やサイクロスポリン(CyA)といった強力な免疫抑制療法を行い、19例(76%)を内科的治療で救命可能であった。反対に、予後不良の因子は脳症の存在であった。【結論】AAIHは組織学的検索が行えないケースが多く、亜急性という経過や画像所見が診断に有用であった。このようなケースでは脳症発症前であれば例え確定診断に至らなくても早期に強力な免疫抑制療法を行うことで救命できる可能性が考えられた。
索引用語 自己免疫性肝炎, 急性発症