セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

潰瘍性大腸炎1

タイトル 消P-321:

う蝕病原性口腔細菌(虫歯菌)S. mutans による潰瘍性大腸炎増悪の検討

演者 日暮 琢磨(横浜市立大・消化器内科)
共同演者 高橋 宏和(横浜市立大・消化器内科), 中島 淳(横浜市立大・消化器内科)
抄録 【緒言】近年,口腔細菌と様々な全身疾患との関連が指摘されている。う蝕の主要な病原性細菌である Streptococcus mutans(以下S.mutans)も時として菌血症、 および感染性心内膜炎を引き起こす場合があることが知られている。しかしながらその他の全身疾患に及ぼす影響についてまだ不明な点が多い。 一方、我々はS. mutans菌株の中に、 標準株とは異なる高病原性株が存在することを見出している。腸炎モデルマウスにおける基礎研究では高病原性株を経口投与しても腸炎を増悪させることはなかったが、経静脈投与すると増悪したため、高病原性株のS.mutansが血中へ侵入することにより炎症の増悪が起きるメカニズムが考えられている。
本研究では、高病原性のS. mutans菌株が、炎症性腸炎の発症・悪化に関与する可能性について、ヒト唾液サンプルを用いて検討した。
【方法】健常ボランティア528例を対照群とし、潰瘍性大腸炎(UC)患者54例からそれぞれ唾液サンプル(約0.1-0.3 ml)を採取し、S.mutansの菌株の単離と同定を行った。S.mutansの菌株は日本人小児口腔から分離された株(標準株)であるMT8148 株(血清型 c) と抜歯後菌血症患者の血液から分離された株(高病原性株)TW295 株 (血清型 k) とに分類し評価を行った。
【結果】健常人は高病原性株が524例中5.3%に検出されたのに対して、UC患者では54例中31.6%と有意に検出率が高かった。性、年齢を調節した多変量解析では高病原性株のS.mutansはUCの罹患に独立した関連因子であった。UCの発症年齢とS.mutansの検出率は本検討では特に相関は認めなかった。
【考察】本研究はUC患者において高病原性株のS.mutansの検出率が健常人と比較して有意に高いことを示した研究である。ヒトにおいても口腔内の高病原性S.mutansの血管内への侵入が炎症性腸疾患の発症や増悪に関与している可能性が示唆された。本邦おいて増加を続けるUCの病態解明や治療戦略のひとつになることが期待される。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 口腔内細菌