セッション情報 パネルディスカッション3(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝炎-重症・難治例の現状と対処法

タイトル 肝PD3-5追:

血清中抗PD-1抗体を用いた自己免疫性肝炎と薬物性肝障害の鑑別診断

演者 山本 和秀(岡山大病院・消化器内科)
共同演者 三宅 康広(岡山大病院・消化器内科), 松本 和幸(岡山大病院・消化器内科)
抄録 【目的】近年、活性化状態のリンパ球表面に発現する抑制性補助刺激分子programmed cell death-1(PD-1)の機能不全が自己免疫性肝炎(AIH)の病態に関与している可能性が報告されている。また、我々は、AIH患者の血清中に抗PD-1抗体の存在することを報告してきた。今回、血清中抗PD-1抗体によるAIHと薬物性肝障害の鑑別診断および抗PD-1抗体とAIH患者の臨床像について検討した。【方法】対象は、1999年AIH国際診断基準で疑診または確診と診断された52例、DDW-J2004基準でスコア3点以上かつ経過より薬物性肝障害(DILI)と診断された24例および健常者62例。Recombinant PD-1を抗原としてindirect ELISA法にて血清中抗PD-1抗体価を測定。なお、健常者における抗体価のmean + 2SD以上を示す場合に抗PD-1抗体陽性とした。【成績】抗PD-1抗体陽性率は、AIH患者63%、DILI患者8%、健常者3%。AIH患者のうち肝生検で急性肝炎期と診断された7例中6例(86%)で抗PD-1抗体が陽性。血清中抗PD-1抗体価はAIH患者で診断時総ビリルビン(r = 0.31)、AST(r = 0.29)、ALT(r = 0.31)と相関していたが、DILI患者では同様の相関関係は認められなかった。抗PD-1抗体陽性AIH患者では陰性患者に比べて、抗核抗体陽性率が高頻度(91% vs. 68%:P = 0.039)で、PSL投与後のALT正常化が遅く(Log-rank test: p = 0.024)、ALT正常化後の再燃が高頻度であった(66% vs. 31%:P = 0.027)。【結論】血清中抗PD-1抗体はAIH、特に急性肝炎期と薬物性肝障害の鑑別診断に有用と考えられた。また、抗PD-1抗体がAIHの病態に強く関与している可能性が推測された。
索引用語 PD-1, 自己免疫性肝炎