抄録 |
背景と目的:我々は潰瘍性大腸炎(UC)の腸管炎症に対する免疫制御性T細胞(Treg; CD25High(Foxp3+)CD4+Tcell)に注目し、末梢血のTreg発現はUCの疾患活動性に逆相関し、粘膜のTreg発現は局所の腸管炎症に相関することを報告した(Kamikozuru ,et al. Clin Exp Immnol)。今回我々は大腸切除術後患者を加え、UCの経過に及ぼす末梢血Tregの制御とその機序に関わるサイトカインの意義について検討した。対象と方法:活動期UC(aUC) 15名、寛解期UC(qUC) 17名、更にaUCのうち外科手術となった12名(oUC)を対象とした。aUC, qUCにおける平均の疾患活動性(CAI)はそれぞれ、13.7±3.0, 3.4±1.3であった。末梢血Treg (CD25HighCD4+)の発現(%Treg)をFACSで、サイトカイン発現をサスペンションアレイ法・ELISA法で網羅的に測定した。結果: %TregはqUCでaUCより有意に増加(P<0.01)、またoUCの%TregもaUCより増加していた(P<0.05)。他方、Treg誘導サイトカイン(TGF-β1, IL-10)は、aUCでqUCやoUCより高値(P<0.01)であった。また、IL-17はoUCでqUCより高値であり(P<0.05)、さらにTh17/Treg (IL-17/IL-10)比もoUCでaUCやrUCより高値であった(P<0.01)。考察:末梢血中の%TregはUCの腸管炎症を反映している事が示された。またaUCではTGF-β1やIL-10の増加によるTregの誘導機構に障害があると考えた。oUCにおけるTh17/Treg (IL-17/IL-10)比の増加は内科治療に不応のUCの免疫学的特徴を表している可能性を示唆した。 |