セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

潰瘍性大腸炎2

タイトル 消P-328:

当院における炎症性腸疾患の家族内発症

演者 須藤 訓(東京慈恵会医大青戸病院・消化器・肝臓内科)
共同演者 相澤 良夫(東京慈恵会医大青戸病院・消化器・肝臓内科)
抄録 炎症性腸疾患の家族内発症の頻度と臨床像を明らかにする目的で自験例(2000~2010年)について検討した.潰瘍性大腸炎162家系のうち,家族内発症は4家系(2.5%)に認めた.このうち3家系は母子例,1家系は父子例,1家系は姉妹例であった.発症年齢の近似は1家系で,病型の類似は3家系に認められた.また重症度は2家系,寛解維持は2家系に近似していた.家族内発症例と非家族内発症例と比較では発症年齢や臨床像に大きな差を認めなかった.クローン病42家系のうち,家族内発症は2家系(4.8%)に認めた.父子例が1家系,兄弟例が1家系であった.発症年齢の近似は1家系で,病型の類似も1家系に認められた.また重症度は1家系に,寛解維持も1家系に近似していた.家族内発症例と非家族内発症例との比較では発症年齢や臨床像に大きな差を認めなかった.当院では1度近親間発症(親子間,同胞間発症)のみであった.過去の報告によると本邦における炎症性腸疾患の家族発症率は,潰瘍性大腸炎が1.8%,クローン病が1.5%とされる.それに対し一般人口における有病率は潰瘍性大腸炎が約0.1%,クローン病が約0.03%であることと比較し,非常に高率であることがわかる.また欧米での家族内発症は約10~20%とさらに高値である.報告でも1度近親間発症がほとんどで,2度近親間発症(祖父母・孫間,伯叔父母・甥姪間発症)は2家系のみであった.潰瘍性大腸炎,クローン病ともに免疫異常や遺伝的因子,環境因子,食餌因子などが多元的に関与した多因子疾患と考えられているが,こうした事実は遺伝因子の強い関与を示唆しており,以前よりHLAを中心に様々な疾患関連遺伝子の研究が行われ,病態解明に寄与している.今後,当院症例も遺伝的検索を進め,検討する.
索引用語 炎症性腸疾患, 家族内発症