抄録 |
【目的】自己免疫性肝炎(AIH)は急性肝炎様に発症し急性肝不全(ALF)の経過を呈する例がある.昏睡型ALFのAIHは予後不良で,早期診断や肝移植時期の判断が重要である.今回我々は, 急性肝炎様発症AIHの臨床的特徴及び重症度との関連について検討した.【対象と方法】当科及び関連施設で経験したAIH 156例中,先行する慢性肝疾患がない急性肝炎様に発症(ALT 200 IU/L以上)した71例を対象. PT40%以上で脳症がない急性肝炎59例(PT40-60%群 11例,60%<群 48例), PT40%以下で脳症I度までの非昏睡型ALF(非昏睡)6例,PT40%以下で脳症II度以上の昏睡型ALF(昏睡)6例に分類. 年齢, 性別, 臨床検査項目, 治療法, 予後等を比較した. また厚労省研究班の重症基準を用いて再評価した.【結果】平均年齢58歳, 男:女6:65. 病型は急性肝炎期14例, 急性増悪期52例,判定不能5例. 昏睡例は急性肝炎例と比してTB, 血小板で有意差を認め, 非昏睡例と比して有意にPTが低値であった. 治療法は非昏睡例でPSL 30-60mg/日投与,1例でパルス療法, 2例でAZP投与にて全例軽快.昏睡例でほぼ全例パルス療法や血漿交換,1例AZP投与,1例生体肝移植が施行された.これら6例中4例軽快,2例が20日及び2ヶ月で肝不全のため死亡.PSL開始時期はPT40-60%群とPT60%<群で有意差を認めた. 重症基準の分類は軽症0例, 中等症 48例, 重症23例. 非昏睡例, 昏睡例は共に重症に分類され, 急性肝炎例で11例は重症に分類された. 重症例は中等症例と比して有意にIgG高値, 血小板低値であった.昏睡例全例で肝実質不均質化, 3例で肝サイズ縮小を認めた.重症に分類された急性肝炎11例は,中等症例と比して年齢, TBが有意に高かった.うち5例はPSL 20mg/日以下で軽快.【結語】昏睡例は非昏睡例に比して有意にPTが低値で予後不良であった. 重症基準は, 重症例の拾い上げに有効だが, 高容量PSLを投与せず軽快する例も認めた. 重症基準は年齢やIgG, 血小板を含む項目に改訂し, 更なる検討が必要と思われた. |