セッション情報 パネルディスカッション3(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝炎-重症・難治例の現状と対処法

タイトル 肝PD3-6:

当科における急性肝炎様発症の自己免疫性肝炎の臨床的特徴と重症度評価

演者 阿部 和道(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科)
共同演者 高橋 敦史(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科), 大平 弘正(福島県立医大・消化器・リウマチ膠原病内科)
抄録 【目的】自己免疫性肝炎(AIH)は急性肝炎様に発症し急性肝不全(ALF)の経過を呈する例がある.昏睡型ALFのAIHは予後不良で,早期診断や肝移植時期の判断が重要である.今回我々は, 急性肝炎様発症AIHの臨床的特徴及び重症度との関連について検討した.【対象と方法】当科及び関連施設で経験したAIH 156例中,先行する慢性肝疾患がない急性肝炎様に発症(ALT 200 IU/L以上)した71例を対象. PT40%以上で脳症がない急性肝炎59例(PT40-60%群 11例,60%<群 48例), PT40%以下で脳症I度までの非昏睡型ALF(非昏睡)6例,PT40%以下で脳症II度以上の昏睡型ALF(昏睡)6例に分類. 年齢, 性別, 臨床検査項目, 治療法, 予後等を比較した. また厚労省研究班の重症基準を用いて再評価した.【結果】平均年齢58歳, 男:女6:65. 病型は急性肝炎期14例, 急性増悪期52例,判定不能5例. 昏睡例は急性肝炎例と比してTB, 血小板で有意差を認め, 非昏睡例と比して有意にPTが低値であった. 治療法は非昏睡例でPSL 30-60mg/日投与,1例でパルス療法, 2例でAZP投与にて全例軽快.昏睡例でほぼ全例パルス療法や血漿交換,1例AZP投与,1例生体肝移植が施行された.これら6例中4例軽快,2例が20日及び2ヶ月で肝不全のため死亡.PSL開始時期はPT40-60%群とPT60%<群で有意差を認めた. 重症基準の分類は軽症0例, 中等症 48例, 重症23例. 非昏睡例, 昏睡例は共に重症に分類され, 急性肝炎例で11例は重症に分類された. 重症例は中等症例と比して有意にIgG高値, 血小板低値であった.昏睡例全例で肝実質不均質化, 3例で肝サイズ縮小を認めた.重症に分類された急性肝炎11例は,中等症例と比して年齢, TBが有意に高かった.うち5例はPSL 20mg/日以下で軽快.【結語】昏睡例は非昏睡例に比して有意にPTが低値で予後不良であった. 重症基準は, 重症例の拾い上げに有効だが, 高容量PSLを投与せず軽快する例も認めた. 重症基準は年齢やIgG, 血小板を含む項目に改訂し, 更なる検討が必要と思われた.
索引用語 自己免疫性肝炎, 急性肝不全