共同演者 |
松岡 克善(慶應義塾大病院・消化器内科), 岩男 泰(慶應義塾大病院・内視鏡センター), 矢島 知治(慶應義塾大病院・消化器内科), 井上 詠(慶應義塾大病院・内視鏡センター), 久松 理一(慶應義塾大病院・消化器内科), 筋野 智久(慶應義塾大病院・消化器内科), 高林 馨(慶應義塾大病院・消化器内科), 米野 和明(慶應義塾大病院・消化器内科), 三上 洋平(慶應義塾大病院・消化器内科), 三好 潤(慶應義塾大病院・消化器内科), 水野 慎大(慶應義塾大病院・消化器内科), 木村 佳代子(慶應義塾大病院・消化器内科), 金井 隆典(慶應義塾大病院・消化器内科), 緒方 晴彦(慶應義塾大病院・内視鏡センター), 日比 紀文(慶應義塾大病院・消化器内科) |
抄録 |
【目的】潰瘍性大腸炎(UC)の難治化にサイトメガロウイルス(CMV)が関与している可能性が指摘され, さまざまな検討がされている. しかし, どのような場合にUCに合併したCMV感染を治療しなくてはいけないのかという点については, 一定のコンセンサスは得られていない. 本研究では, 大腸組織生検でCMV免疫染色陽性のUC患者の予後を検討することで, 腸管局所でのCMV免疫染色陽性が抗CMV療法開始の指標となり得るかを検討した.【方法】当院で2009年7月から2010年2月までに入院加療を必要とした活動期のUC患者59名を対象とした. 大腸生検組織を用いて, 免疫染色によりCMV感染の有無を評価した.【成績】入院加療を要した59名のUC患者のうち46名がCMV IgG陽性であり, 13名がCMV IgG陰性であった. CMV IgG陽性46名のうち, 9名(19.6%)が免疫染色陽性であった. これら9名のうちCMV Ag(1-21値)は6名で陽性であった. 9名のうち抗ウイルス療法を行ったのは3名であり, 1名は著効, 1名は手術, 1名はウイルスは消失したが, 症状の改善をみとめず6ヵ月後に手術となった. 抗ウイルス療法を行わなかった6名(66.6%)に関しては, 通常のUCの治療(FK506 3名, PSL 2名, CsA 1名)を行い, いずれも症状の改善を認めた.【結論】UCにおける腸管局所でのCMV感染陽性症例であっても, ほとんどの症例では抗ウイルス療法は必要ではなく, UCの治療を行うことで症状の改善がみられた.免疫組織でのCMV陽性のみでは, 抗ウイルス療法開始の指標とはなり得ないと考えられる. |