セッション情報 パネルディスカッション3(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝炎-重症・難治例の現状と対処法

タイトル 肝PD3-7:

重症自己免疫性肝炎の臨床病理学的検討

演者 守屋 圭(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科)
共同演者 吉治 仁志(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 福井 博(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科)
抄録 【目的】近年,本邦では自己免疫性肝炎(AIH)が高齢化しつつある.多くはステロイド治療が奏効するが,その病像はさまざまで難治例や死亡例も存在する.本研究では当科で経験した全AIH症例を急性肝不全症例と対比しながら分析し,重症化要因の抽出を試みた.【方法】過去20年間に当科で精査加療したAIH 171症例およびAIHを含む急性肝不全症例(PT40%未満) 79例に臨床病理学的な解析を加えた.【結果】急性肝不全症例を成因別にみるとAIH (28%)はB型 (25%) や原因不明 (19%) 例を上回り,劇症肝炎型51症例の死亡率はAIH (64%)がB型(79%)に次いで高率であった.PT40% を境にAIHを重症型23例(急性肝炎重症型11例,劇症肝炎12例)と非重症型148例に分けると,重症型は非重症型に比し診断時年齢が若年で,病悩期間が短く,初診時の血清アルブミン値が低く,ALT,総ビリルビン,FDPが高値を示した.ALT高値が遷延したPBC合併AIHはステロイド治療に抵抗性で高率に肝不全に進行し,生存し得た3症例中2例も肝移植を必要とした.次に65歳以上の高齢者群63例と65歳未満の非高齢者群108例を比較すると,高齢者AIHでは重症化率は低率であった (6% vs. 17%)が,重症化した場合の死亡率は明らかに高率であった(75% vs. 26%).さらに急性型AIHは非急性型AIHに比し血清IgG値,肝線維化進展度は有意に低く,初回入院時の死亡率が高率であった (20% vs. 4%).【結論】AIHでは重症化した高齢者,高度な肝炎が持続するPBC合併例および急性発症例が急速に肝不全に進行しやすく,肝移植も考慮に入れた集学的治療が必要であることが示唆された.
索引用語 自己免疫性肝炎, 急性肝不全