セッション情報 パネルディスカッション3(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝炎-重症・難治例の現状と対処法

タイトル 肝PD3-8:

小児の『急性肝炎として発症した自己免疫性肝炎』の治療と予後

演者 十河 剛(済生会横浜市東部病院・こどもセンター肝臓・消化器部門)
共同演者 乾 あやの(済生会横浜市東部病院・こどもセンター肝臓・消化器部門), 藤澤 知雄(済生会横浜市東部病院・こどもセンター肝臓・消化器部門)
抄録 【目的】2011年、厚生労働省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班より「急性肝炎ないしは重症肝炎,急性肝不全として発症する自己免疫性肝炎(AIH)の病態についての提唱」が発表され、組織学的に急性増悪期および急性肝炎期の2型に分類されることが示された。とくに急性肝炎期の症例では診断困難であり、治療開始が遅れ、急性肝不全に移行するとステロイド抵抗性となり、きわめて予後不良とされている。我々は当科で経験した15歳以下の『急性肝炎として発症したAIH』(以下、acute AIH)の治療および予後について検討した。【方法】2007年4月から2012年2月までの間に当科でAIHとして診療された症例は24例であり、11例(45.8%)は発症前に肝機能異常の指摘がなく、可視黄疸と血清トランスアミナーゼ値 400 IU/L以上の高値で発症したacute AIHであった。これら11例の治療および予後について後方視的に検討した。【成績】発症年齢は9か月~14歳(中央値 5歳)、男:女=7:4であった。2例は組織学的に線維化の進行した急性増悪期、9例が組織学的に線維化が軽度あるいは認めない急性肝炎期であった。急性肝炎期9例中2例は急性肝不全昏睡型へ進展した。抗核抗体、抗平滑筋抗体、抗LKM-1抗体のいずれか一つでも陽性は11例中4例(36.4%)であり、HLA-DR4陽性は11例中8例(72.7%)であった。T細胞活性化を表す可溶性IL-2レセプターは1340~5885 U/ml(中央値 3954 U/ml) と全例高値を示した。全例でメチルプレドニゾロンパルス療法が施行され、後療法としてプレドニゾロンとアザチオプリンが投与された。シクロスポリンAは6例に投与された。血液浄化療法は7例に実施され、2例は血漿交換と持続濾過透析、5例は血漿交換のみ行った。全例、内科的治療が著効して救命された。【結論】小児のacute AIHは少なくない。小児のacute AIHは自己抗体陽性率が低く、診断に苦慮する場合もあるが、可溶性IL-2レセプターの上昇は病態把握に有用である。早期に病態を把握し、積極的な治療介入を行うことで、良好な予後を期待できる。
索引用語 シクロスポリン, ステロイドパルス療法