セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

潰瘍性大腸炎6

タイトル 消P-356:

人工ニューラルネットワークを用いた潰瘍性大腸炎に対する白血球除去療法の長期経過予測

演者 高山 哲朗(埼玉社会保険病院・内科)
共同演者 岡本 晋(慶應義塾大病院・消化器内科), 吉田 武史(埼玉社会保険病院・内科), 金井 隆典(慶應義塾大病院・消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大病院・消化器内科)
抄録 これまでに我々は白血球除去療法施行患者の長期経過を報告してきた。潰瘍性大腸炎患者にとって長期経過の中で手術を要するか否かはQOLに大きな影響を与える。手術を回避するように内科的診療を行うことが重要だが、一方で無効な患者に対しては時期を逸せず手術を行うことも重要である。このことからも患者の長期経過として手術に至るか否かを予測することは臨床上重要と考えられる。しかしながら、これまでの報告では潰瘍性大腸炎患者のCAP施行後に手術に至るか否かを予測する有用な手段は存在していない。今回我々は人工ニューラルネットワーク(ANN)を用い、高い精度でCAP後に手術に至るか否かを予測する式を開発した。ANNとはヒトの神経伝達を模したシステムであり既存データを学習することで新規のデータに対する予測を可能とするシステムである。対象は慶應義塾大学病院で2001年から2006年までに白血球除去療法を施行した117名のうち、解析可能であった90例(平均年齢36.4±15.5歳、男性55例、女性35例、平均罹病期間7.6±7.1年)の患者とした。得られたデータから入力因子として年齢、性別、罹患範囲、罹病期間、臨床病型、CAP前後のCAI値、ステロイド使用歴、免疫調整剤の使用歴、入院歴、手術歴を用い、出力因子としてはその後の手術の有無を用いた。感度、特異度はそれぞれ96%、97%と非常に高い予測効率を示した。Sensitivity Indexを用いて重要因子を検証した結果、治療前の入院歴、手術歴、CAPの効果、免疫調整薬使用の有無が予測に重要な項目が抽出され、これら因子を欠如させて予測式を作成した場合、予測効率は感度、特異度がそれぞれ60%、71%へと低下した。今回我々の作成した予測式は高い精度でCAP後の手術の有無を高い精度で予測することができた。コンピューター上において各項目の数値を変動させることでその後の経過をシミュレーションすることも可能であり、臨床判断の補助ツールとなりうると考えられた。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 白血球除去療法