セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

潰瘍性大腸炎7

タイトル 消P-362:

難治性潰瘍性大腸炎における治療選択と手術適応の検討

演者 村野 実之(大阪医大・2内科)
共同演者 楢林 賢(大阪医大・2内科), 能田 貞治(大阪医大・2内科), 石田 久美(大阪医大・2内科), 阿部 洋介(大阪医大・2内科), 井上 拓哉(大阪医大・2内科), 村野 直子(大阪医大・2内科), 時岡 聡(大阪医大・2内科), 梅垣 英次(大阪医大・2内科), 樋口 和秀(大阪医大・2内科)
抄録 【背景と目的】内科治療無効の潰瘍性大腸炎(UC)では,その手術適応の決定と手術時期が臨床上問題となる.これまで我々は,難治性UCの手術適応において,(1)臨床活動指数の推移よりPSL強力静注療法開始後3日目遅くとも7日目に抵抗例の予測が可能.(2) CMV感染合併例では内科治療に抵抗し,外科手術を念頭にした厳重な経過観察が必要.(3)内視鏡所見で難治性病変を有する症例は適切な時期に内科治療を断念することが必要であることを報告してきた.近年,Tacrolimus (FK506)の登場により,難治性UCに対する寛解導入効果が実証されている.今回は難治性UCに対するFK506の治療効果と長期予後について検討した.【対象と方法】難治性UCに対する寛解導入療法としてFK506投与を行った29例(男女18:11,平均年齢42.0歳)を対象とし,(1) FK506の治療奏効性・長期予後,(2)奏効例と無効例の臨床的相違,さらに(3)急速導入療法の有効性について検討した.【成績】(1)ステロイド抵抗例に対するFK506投与短期奏効率は83.3%で,再燃は31.8%に見られた.尚,CMV感染合併例は82.4%であった.(2)臨床的検討:発症時Clinical Activity Index(CAI)では有意差は見られなかった(奏効群15.3vs 無効群15.8).ステロイド投与量では直前の4週間の総投与量において無効群で有意に多量であった(奏効群651mg vs 無効群901mg).さらにFK506導入までのステロイド投与期間は無効例で有意に長期間であった(奏効群16.8日 vs 無効群29.8日).FK506投与の奏効性を経時的に検討したところ投与後5日目以降においてCAIに有意差を認めた.(3) 投与4日以内で有効トラフ濃度に到達した症例は92.7%であり、至適血中トラフの平均到達時期は2.96日であった.【結論】FK506は難治性UCの寛解導入において有効で緊急手術の回避が可能であるが,投与を考慮する際,症例の選択,導入時期,および投与期間などの問題,また副作用もあるため厳重な管理の上,投与が必要であると考えた.
索引用語 難治性潰瘍性大腸炎, Tacrolimus