セッション情報 | パネルディスカッション3(肝臓学会・消化器病学会合同)自己免疫性肝炎-重症・難治例の現状と対処法 |
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タイトル | 肝PD3-9:自己免疫性肝炎におけるコルチコステロイド治療無効例の特徴 |
演者 | 有永 照子(久留米大・消化器内科) |
共同演者 | 井出 達也(久留米大・消化器内科), 佐田 通夫(久留米大・消化器内科) |
抄録 | 【目的】自己免疫性肝炎(AIH)の多くはコルチコステロイド(CS)治療に奏効し予後は良好である。しかしCS治療に反応せず治療の選択に難渋する例もある。そこで、今回AIHに対しCS治療を行った症例を対象に有効例と無効例とを比較検討しCS無効例の臨床的特徴と予後を明らかにした。 【対象と方法】当科及び関連病院のAIH 205例のうちCS治療を行った166例(81.0%)を対象とした。平均年齢は56.6歳,F:M=149:17,平均観察期間は92.5か月。CS治療により経過中ALT値が正常値になったものを有効群、正常値にならなかったものを無効群とした。診断時のAIH score, TB値, ALT値,ALP値,γGTP値,IgG値,PT(%),血小板数,発症様式,肝硬変の有無,合併症,転帰を両群において比較検討した。 【成績】有効群は147例(88.6%),無効群は19例(11.4%)であった。無効群は全例女性であった。診断時の生化学データーで有意差を認めたものはALT値(482.8±516.4 vs 231.5±374.4;p=0.031)のみであった。診断時の肝硬変の有無にも有意差はなかった。発症様式は有効群に比べ無効群に慢性発症が有意に多かった(36.1% vs 68.4%;p=0.0067)。合併症に関しては無効群に原発性胆汁性肝硬変(PBC)の合併が明らかに高率であった(6.1% vs 31.6%;p=0.0003)。 転帰:有効群は6例(4.1%)が死亡,無効群は8例(42.1%)が死亡し明らかに無効群が高率であった(p<0.0001)。死因は有効群では肺感染症4例,くも膜下出血2例であった。一方,無効群では肝不全4例,肺感染症2例,肝細胞癌1例,消化管出血1例であった。無効群の1例は生体肝移植を行い現在肝機能は正常である。Kaplan-Meier法による生存率の比較では明らかに無効群が予後不良であった(p<0.0001)。 【結論】CS無効群が11.4%存在した。有効群に比べALT値は低くPBCの合併が高率であった。CS無効群は明らかに予後不良であり他の免疫調整剤の使用や肝移植を早期に検討すべきである。 |
索引用語 | 自己免疫性肝炎, コルチコステロイド治療無効 |