セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸-腫瘍2

タイトル 消P-371:

5-アミノサリチル酸によるヒトH-rasトランスジェニックマウスにおける大腸腫瘍発生予防

演者 三好 潤(慶應義塾大・消化器内科)
共同演者 矢島 知治(慶應義塾大・消化器内科), 島村 克好(慶應義塾大・消化器内科), 松岡 克善(慶應義塾大・消化器内科), 岡本 晋(慶應義塾大・消化器内科), 樋口 肇(慶應義塾大・消化器内科), 船越 信介(慶應義塾大・消化器内科), 高石 官均(慶應義塾大・腫瘍センター), 日比 紀文(慶應義塾大・消化器内科)
抄録 【目的】NSAIDs,COX-2選択的阻害剤による散発性大腸癌,腺腫の予防効果が報告されているが,長期投与に伴う消化管粘膜傷害,心血管疾患の有害事象のため化学予防薬としては認められていない.一方,5-アミノサリチル酸(5-ASA)は炎症性腸疾患の治療薬として広く用いられ,長期投与の安全性が確立されていると同時に潰瘍性大腸炎に伴う大腸癌の発症予防効果が示されているが,その予防効果が抗炎症作用の結果であるか,直接的な腫瘍抑制効果であるかについては明らかではない.我々は5-ASAのCOX-2抑制効果に着目し,5-ASAが散発性大腸癌に対するより安全な化学予防薬となりうる可能性を考え,1,2-dimethylhydrazine(DMH)処理により高率に大腸癌を発症するヒトH-rasトランスジェニックマウスを用いて5-ASAの大腸腫瘍予防効果を検討した.【方法】H-rasトランスジェニックマウス(Ras群)12匹に11週齢からDMH 20mg/kgを週1回20週間皮下注射し,最終投与から5週後に大腸病変の評価を行った.5-ASA投与群(Ras+5-ASA群)10匹では,DMH投与開始時より,5-ASA摂取量が800mg/kg/日となるように5-ASA混合飼料を与えた.対照群として本マウスのバックグランドである野生型C57BL/6マウス10匹についても同様にDMHを投与した(WT群).【成績】腫瘍発生率はRas群10/12匹(83.3%),Ras+5ASA群4/10匹(40%),WT群2/10匹(20%)であった.Ras+5ASA群ではRas群よりも有意に発生率が低下していた(p = 0.048).また発生した腫瘍径はRas+5ASA群で有意に小さかった(p = 0.015).各群に発生した腫瘍は組織免疫染色にてCOX-2陽性であった.【結論】本研究において5-ASAは大腸腫瘍予防効果を示し,5-ASAがヒト大腸癌に対する化学予防薬となりうる可能性が示唆された.
索引用語 大腸腫瘍, 化学予防