セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸-腫瘍2

タイトル 消P-373:

大腸癌におけるDicer mRNA発現およびその3'非翻訳領域変化の検討

演者 濱屋 寧(浜松医大・分子診断学)
共同演者 金岡 繁(浜松医大・分子診断学), 栗山 茂(浜松医大・1内科), 山田 貴教(浜松医大・1内科), 杉本 光繁(浜松医大・1内科), 大澤 恵(浜松医大・1内科), 杉本 健(浜松医大・1内科)
抄録 【目的】MicroRNA(miRNA)は多くの場合、癌抑制的な作用を持つ。大腸癌では広範なmiRNA発現が低下している。miRNAのプロセシングに関与するDicerの発現低下が広範なmiRNA低下の一因である。DicerもmiRNAによる転写後調節を受けるが、それは3'非翻訳領域(UTR)に様々なmiRNAが結合することによる。3'UTRはpolyadenylation(PA)を経て形成され、pre-Dicer mRNAは近位と遠位側のPA signalをもつ。近位側でPAがおこると3'UTR内のmiRNAが結合する部位が失われるため、PA signalの選択は大きな意味をもつ。大腸癌では正常と比べPA signalの選択が変化していることが培養細胞で報告されていた。そこで大腸癌の臨床検体を用いてmRNA発現と3'UTRの変化を検討した。【方法】対象は大腸癌52例。内視鏡検査時に病変と正常部から組織を採取、RNAを抽出した。DNase処理後にoligo(dT)を用いてcDNAを作成し、リアルタイムRT-PCRを行った。Coding sequenceを標的としたTaqManプローブでDicer mRNA発現(coding Dicer mRNA)を評価、近位側のPA signalより遠位側を標的としたTaqManプローブで長い3'UTRをもつDicer mRNA発現(long 3'UTR Dicer mRNA)を評価した。【成績】病変部、正常部のcoding Dicer mRNA発現はそれぞれ8.8(1.8-220)、18.0(2.9-380)であり、病変部は発現が低下していた(P<0.005)。またlong 3'UTR Dicer mRNA発現は病変部で4.6(0.6-45)、正常部で4.1(0-23)であり差を認めなかった(P=0.44)。Long 3'UTRのcoding Dicer mRNAに対する比は病変部では正常部より高かった(P<0.001)。進行度を用いた解析ではcodingとlong 3'UTR Dicer mRNA発現は差を認めなかった。【結論】大腸癌ではDicer mRNAの発現が低下し、さらにlong 3'UTR Dicer mRNAが相対的に多いため、より転写後調節を受ける可能性が示唆された。大腸癌におけるDicer発現変化には、転写レベルに加えて転写後調節の異常が関与し、早期の段階からこれらの異常がおこっていると予想された。
索引用語 大腸癌, 転写後調節