セッション情報 パネルディスカッション3(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝炎-重症・難治例の現状と対処法

タイトル 肝PD3-11:

自己免疫性肝炎における難治要因の解析と予後

演者 鈴木 義之(虎の門病院・肝臓センター)
共同演者 小林 万利子(虎の門病院・肝臓センター), 熊田 博光(虎の門病院・肝臓センター)
抄録 【目的】自己免疫性肝炎(AIH)患者における難治要因には大きく分けて二つのパターンが存在する。まず、急性発症例で、治療開始が遅れてしまう症例や確定診断困難症例があげられる。次に治療開始後も治療反応性が不良である症例と再燃をきたす治療抵抗例とがある。今回は急性発症例と治療抵抗例の病態と治療の反応性を解析し、いかに有効な治療を行うべきかを検討したので報告する。【方法】1979年から2011年までに当院でAIHと診断され長期に渡る経過が観察し得た症例は153例存在する。そのうち今回はウイルスマーカー陽性症例やPBCとのoverlap症例は除外し113例につき解析を行った。診断は1999年の国際診断基準のscoringと2008年の簡易systemによるscoringを用いて行った。LCへの進展は、組織学的検査または血小板10万未満、食道静脈瘤の出現をもって診断した。【成績】平均観察期間は中央値13年(3~30年)、全症例113例中、急性発症例は11例存在した。従来の報告と同様、IgG値や抗核抗体が低く国際診断基準でdefiniteと診断される症例は少なく、簡易システムを用いた診断の方が治療の遅れを防げると判断された。治療抵抗例はAST値を50以下でコントロールしえない症例とし、19例(17%)存在した。このうち10例(53%)が肝硬変へ移行し、反応良好例では13/94例(14%)しか肝硬変への移行は認められなかった。また、アザチオプリンの併用を行っている症例からの肝硬変移行は一例も認められなかった。全症例を対象としたKaplan-Meier法による検討では肝硬変移行率は19%であった。背景因子で比較すると抵抗例はIgG値、γ-glob.、抗核抗体、γGTPの順に反応良好症例との間に有意差が認められた。また、一方肝硬変移行へ寄与する要因を多変量解析で検討すると治療反応性のみが有意な因子であった。【結論】非定型症例である急性発症例については今後もさらなる検討が必要であると考えられた。治療反応不良例を含めた難治例に対しては柔軟な対応による早期の治療とPSL以外の治療薬を含めた治療法を検討していくことが肝要であると考える。
索引用語 AIH急性発症, アザチオプリン