セッション情報 パネルディスカッション4(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器がん検診学会合同)

膵癌早期発見に向けた取組み

タイトル 内PD4-1:

膵液細胞診・超音波内視鏡下生検併用による膵癌早期診断への取り組み

演者 松本 和也(鳥取大・消化器内科)
共同演者 原田 賢一(鳥取大・消化器内科), 村脇 義和(鳥取大・消化器内科)
抄録 【背景】膵腫瘤に対する超音波内視鏡下穿刺吸引生検(以下EUS-FNA)の正診率は約90%とされ、10%を正診できないことが課題である。またEUS-FNA施行可能な施設は限られ、多くの施設で施行できる膵液細胞診の診断精度を高めることも重要である。さらに、慢性膵炎・膵嚢胞などの膵癌リスク症例に対し腹部CT・MRIで検査が終了し、経過観察とされていることが多い。【目的】膵癌リスク症例の紹介を医師会・市中病院に啓発し、EUS-FNAと膵液細胞診の併用で診断能が向上するかを検討した。【対象と方法】2008年1月~2011年9月にEUS-FNAもしくは膵液細胞診を施行した161例。使用スコープはGF-UCT240AL5、観測装置はProSound α10、穿刺針は22G針または25G針を使用した。膵液細胞診に関しては、ENPD tube(PD-PD5F)留置後、6回膵液採取もしくはセクレチン負荷後1回採取した。2010年4月よりhigh volume center病理部との意見交換、医師会・市民向け講演、市中病院との勉強会に精力的に取り組んだ。【結果】膵癌診断の感度/特異度/正診率は、EUS-FNAで87.3%(76/87)/100%(31/31)/90.7%(107/118)、膵液細胞診で70.8%(17/24)/100%(48/48)/90.3%(65/72)で、EUS-FNAと膵液細胞診を併用すると86.9%(80/92)/100%(69/69)/92.5%(149/161)と診断精度が向上した。検査体制が確立した2010年4月以降のEUS-FNAと膵液細胞診の併用で、97.9%(46/47)/100%(46/46)/98.9%(92/93)と更に向上した。EUS-FNAで診断できず、膵液細胞診により悪性と診断した症例を3例経験した(微小浸潤癌、IPMC、血管介在にてEUS-FNA施行困難症例)。情報提供により、膵癌リスク症例の紹介は増加し、EUS/EUS-FNA件数も飛躍的に向上した(2007年30/7例、2010年212/37例)。【考察および結語】EUS-FNAと膵液細胞診を併用することで、正診率は飛躍的に向上した。膵癌早期発見に関しては、EUS・CTを中心とした画像診断・EUS-FNAへの習熟、膵液細胞診手技の見直しに加え、医師会・市中病院への啓発による膵癌ハイリスク症例の紹介が重要と思われる。
索引用語 膵癌, 膵液細胞診