セッション情報 パネルディスカッション4(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器がん検診学会合同)

膵癌早期発見に向けた取組み

タイトル 検PD4-2:

膵癌早期発見を目指した地域医療連携

演者 深澤 光晴(山梨大・1内科)
共同演者 依田 芳起(山梨県厚生連健康管理センター), 榎本 信幸(山梨大・1内科)
抄録 【目的】膵癌の治療成績向上のためには無症状期での早期診断が必須であり,そのためには危険因子の啓蒙,検診精度の向上,医療連携が重要である.検診施設と大学病院の共同研究により,膵癌検診の実状と地域医療連携の効果ついて解析した.【方法】2001年~2010年までの検診受診者のべ605,948例(膵癌発見75例)および同時期に当院で診療した膵癌250例を対象とした.2009年以降は,検診施設と連携して初回膵管拡張,膵嚢胞症例に対して積極的にEUS(±ENPD細胞診)による精査を導入した.2008年までを前期,上記診断体系を取り入れた2009年以降を後期とし,地域医療連携による診断成績を比較した.1.危険因子,2.発見契機と所見別オッズ比,3.地域連携による効果,について検討した.【結果】1.膵癌群と年齢調整コントロール群で比較すると,男性は喫煙歴(現在)(OR 2.3), 糖尿病既往(3.3),糖尿病初回(11.2),女性は喫煙歴(現在)(5.5),糖尿病既往(4.4),糖尿病初回(6.1),胆石(2.8)が有意な危険因子であった(p<0.05).2.発見契機はUS72例(96%):腫瘤53,膵管拡張34,嚢胞12,胆管拡張5(重複あり),血液検査異常5であった.検査所見の膵癌危険因子としてのオッズ比は,膵管拡張(初回指摘):193,(拡張歴あり):27,膵嚢胞(初回指摘):25,(嚢胞歴あり):12,CA19-9 (100以上):482, エラスターゼ1(400以上):91であった.3. 地域連携により当院の膵癌診断数は前期19例/年から後期38例/年に増加し,2011年は52例まで増加した.TS1膵癌は前期1.6例/年から後期7.0例/年に増加し,膵癌全体に占める小膵癌率(TS1/全膵癌)も8%から20%に上昇した.検診発見群と症状受診群の比較では,切除率57%:29%,MST 19ヵ月:10ヵ月,5年生存率28%:6%であり,検診群が有意に切除率,予後ともに良好であった.【結語】検診による無症状発見,地域連携により膵癌の早期発見に進歩が認められた.膵癌早期発見の必要条件として1.危険因子の啓蒙,2.検診・2次施設の診断レベルの向上,3.連携体制の整備を掲げ,地域での膵癌早期発見を目指した取り組みについて発表する.
索引用語 膵癌, 地域連携