セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸-その他3

タイトル 消P-423:

アメーバ腸炎のリスク因子

演者 西村 崇(国立国際医療研究センター国府台・消化器科)
共同演者 永田 尚義(国立国際医療研究センター・消化器科), 中島 亮(国立国際医療研究センター・消化器科), 矢田 智之(国立国際医療研究センター国府台・消化器科), 上村 直実(国立国際医療研究センター国府台・消化器科)
抄録 【目的】Entamoeba histolytica(E. histolytica)によるアメーバ感染は全世界で5000万人が罹患し,年間4万人の死亡者がいると言われる.本邦は非流行国であるが, 近年増加傾向である.リスク因子を考慮した診療が早期診断において重要であるが,十分に検討されていない.今回,HIV診療の多い当院においてアメーバ腸炎のリスク因子を明らかにする.【方法】当院2003年から2009年において下部消化管内視鏡検査を施行し,性行為感染症(HIV感染や梅毒・HBV感染の既往)の有無が検査された10,930例を対象とした.アメーバ腸炎の診断は,生検または腸液からE. histolytica が証明された場合とした.性別,年齢,HIV感染症,梅毒感染・HBV感染の既往を調査項目とし,HIV患者ではCD4値と性行動も検討した.性行動は,men who have sex with men(MSM)とheterosexualに分類した.アメーバ腸炎患者は感染経路を聴取し,海外渡航歴,知的障害者施設入居者,commercial sex worker (CSW), CSWとの接触,MSMの有無を調査した.【成績】54例(0.49%)がアメーバ腸炎であった.多変量解析において,男性(Odds ratio [OR], 8.4; 95% confidence interval [CI], 2.0-35, p<0.01),年齢50歳以下 (OR, 4.7; CI, 2.4-9.2, p<0.01),梅毒感染の既往 (OR, 2.9; CI, 1.4-6.0, p<0.01),HIV感染症 (OR, 16; CI, 7.9-32, p<0.01) が独立したアメーバ腸炎のリスク因子であった.HIV感染患者では,多変量解析においてMSM (OR 4.7, CI 1.4-16, p< 0.01) が独立したリスク因子であり,CD4数の低値は関連しなかった(p=0.08, by trend test).感染経路は,海外渡航者,知的障害者施設入居者は皆無であった.MSM患者は54例中35例(65%)と最も多くその80%(28例)がHIV感染者であり,CSWが感染経路に関与したと思われる患者は12例(22%)でその83%(10例)は非HIV感染者であった.【結論】内視鏡検査において,男性,若年,梅毒感染の既往,HIV感染症を有する患者は本疾患を念頭に置くべきである.
索引用語 アメーバ腸炎, HIV