セッション情報 パネルディスカッション4(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器がん検診学会合同)

膵癌早期発見に向けた取組み

タイトル 消PD4-4:

膵がん高危険群に対する超音波による定期検査の有用性

演者 高倉 玲奈(大阪府立成人病センター・検診部)
共同演者 田中 幸子(大阪府立成人病センター・検診部), 片山 和宏(大阪府立成人病センター・肝胆膵内科)
抄録 【目的】我々は前向き試験により膵のう胞(5mm以上)および主膵管の拡張(膵体部で2.5mm以上)がそれぞれ独立した膵癌の高危険因子であり、両所見を併せ持つ人の膵がん罹患リスクは27.5倍、5年累積膵がん罹患率は5.6%であることを報告してきた(Tanaka S et al. Radiology 2010)。これらの高危険群に対する超音波を主体とした定期検診の膵がん早期診断に対する有用性について検討する。
【対象と方法】1998年から2008年までの10年間に超音波検査で主膵管拡張(体部で2.5mm以上)あるいは膵のう胞(最大径5mm以上)を指摘された985名(男性484名、女性539名、年齢:35-78歳、平均62.9±8.8歳)を登録し、2010年末ないしは80歳になるまで膵精密超音波検査を3ないし6ヶ月ごとに定期的に行った。
【成績】2010年12月末までの平均71.9カ月の経過観察で27例に膵がんが発症した。発見膵がんのうちの早期がん(Stage0,IA,IB)の割合は63%、切除率は74.1%、5年累積生存率は54.6±12.1%であった。この成績は当院で2002年から2003年に入院診療を行った202例の膵癌におけるそれぞれ8.9%、38.1%、15.7±2.8%に比べて著しく高かった。精査の契機となった超音波所見は低エコー、乏血性(造影エコー追加)結節の出現が56%、のう胞内結節の出現が15%であった。
【結論】膵のう胞(5mm以上)あるいは主膵管の軽度拡張を有する高危険群に対する超音波検査による経過観察は長期生存を見込める早期の膵がんの診断に有用である。今後、適切な定期検査の間隔についての検討が必要と考えられる。
索引用語 膵がん, 高危険群