セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 73:診断に苦慮した傍膵嚢胞性疾患の一例 |
演者 | 五十嵐 久人(国立病院機構 別府医療センター 消化器科) |
共同演者 | 古賀 荒太郎(国立病院機構 別府医療センター 消化器科), 村尾 寛之(国立病院機構 別府医療センター 消化器科), 北村 陽介(国立病院機構 別府医療センター 消化器科), 鶴田 悟(国立病院機構 別府医療センター 消化器科), 良永 雅弘(国立病院機構 別府医療センター 消化器科), 恵良 昭一(国立病院機構 別府医療センター 臨床検査科), 赤嶺 康夫(国立病院機構 別府医療センター 消化器科), 松本 敏文(国立病院機構 別府医療センター 外科), 東 秀史(国立病院機構 別府医療センター 外科), 伊藤 鉄英(九州大学大学院 病態制御内科) |
抄録 | 症例は58歳女性。主訴は腹部不快感。平成16年8月に他院婦人科にて子宮体癌(stage Ic)と診断、子宮卵巣摘出術及び術後全身化学療法が施行された。術後臍上部に時折圧迫感を認めていたが、痛み無く放置していた。今回術後1年目の腹部CT検査施行されたところ、膵尾部に接して7.7x4.4 cmの嚢胞性病変が認められた。精査加療目的にて平成17年9月当科入院となった。腹部MRI所見では膵体部背側下部を中心に径7.4 X 4.3 X 7.4 cmの大きな嚢胞性病変を認め、被膜は厚く多房様であった。T2強調画像では嚢胞内容液は粘液調であった。ERPでは主膵管径は正常で分枝膵管にも異常を認めず、尾部膵管は嚢胞により圧排されていた。主膵管と嚢胞との交通は認められなかった。EUSでは膵体尾部背側に連続した嚢胞内の隔壁は厚く、内部に結節性病変は認められなかった。膵実質と嚢胞との境界は明瞭であった。血液検査上膵酵素上昇は認めず、CA19-9、Span-1、Dupan-2、CA12-5全て正常範囲であった。嚢胞は膵外由来の可能性もあったが、形態より膵粘液性嚢胞腫瘍が強く疑われ当院外科にて手術が施行された。術中所見では嚢胞は膵原発ではなく膵下部、前腎傍腔に存在していた。膵との剥離は容易であったが左腎上極、大動脈左壁に強固に癒着していた。診断目的で嚢胞を試験穿刺したところ灰白色の粘液が吸引された。内容液の細胞診および細菌培養はいずれも陰性であった。嚢胞天蓋切除および開窓術を施行したが、嚢胞壁後面に腎血管修復と思われる残糸を認めた。病理組織診断は線維被膜をもつ単純嚢胞であった。嚢胞内にはフィブリン塊が付着し一部隔壁を形成していた。家族に子宮癌手術当時の経過を再度聴取したところ、翌日再手術となりかなり出血を認めたとのことであった。以上より今回指摘された病変は1年前の手術後に形成された血腫が変性・修飾した嚢胞であることが推察された。術前診断できなかった腹腔内血腫の報告例では、術前診断が膵嚢胞性腫瘍や膵癌とされたものも散見され合わせて考察する。 |
索引用語 | 膵嚢胞, 血腫 |