セッション情報 一般演題

タイトル 95:

腫瘍随伴症候群として低血糖と高コレステロール血症を呈した肝細胞癌の1剖検例

演者 田尻 博敬(九州大学 大学院 医学研究院 病態機能内科学 (第二内科))
共同演者 東 晃一(九州大学 大学院 医学研究院 病態機能内科学 (第二内科)), 緒方 久修(九州大学 大学院 医学研究院 病態機能内科学 (第二内科)), 飯田 三雄(九州大学 大学院 医学研究院 病態機能内科学 (第二内科)), 住吉 真治(九州大学 大学院 医学研究院 病理病態学)
抄録 症例は68歳・男性。平成5年献血で肝障害を指摘され、某病院に2年間通院したがその後放置。平成16年12月上腹部痛の為近医受診。上部消化管内視鏡検査で局在病変を認めなかったが、AST 120U/L、ALT 76U/Lと肝障害を指摘され、精査目的で平成17年2月当科入院となった。入院時、WBC 4000/μL、RBC 431×104/μL、Hb 13.6g/dL、Plt 22.9×104/μL、PT 103%、HPT 106%、T.Prot 7.6g/dL、Alb 4.0g/dL、T.Bil 1.7mg/dL、D.Bil 0.5mg/dL、AST 251U/L、ALT 113U/L、LDH 395U/L、Al-p 921U/L、γ-GTP 411U/L、Ch.E 114U/L、 T.Chol 348mg/dL、HDL-Chol 42mg/dL、T.G 87mg/dL、FBS 75mg/dL、NH3 40μg/dL、ICG-R15 29.6%、CRP 1.31mg/dL、BTR 5.25、ANA(±)、AMA(-)、ASMA(-)、HBsAg(+)、eAg(-)、eAb(+)、HBV-DNAポリメラーゼ 0 CPM、HBV-DNA(TMA) 5.4LGE/mL、HCV-Ab(-)、AFP 229464ng/mL、PIVKA-2 52928mAU/mL、CEA 6.4ng/mL、CA19-9 97.4U/mL。画像診断で、肝両葉の多数の腫瘍と、門脈本幹~左右一次分枝内の腫瘍塞栓(PVTT)を認めた。また両肺野に無数の結節を認め、多発性肺転移の所見であった。一方、Gaシンチで肝内に複数の異常集積を認めたものの、骨シンチでは明らかな異常集積を認めなかった。直ちに肝動注化学療法(low dose FP療法)を開始し、併せてPVTTに対し計40Gy放射線照射を施行した。なお初回入院中には低血糖発作を認めず、T.Chol値は退院時600と上昇していた。3月下旬より低血糖症状が度々出現するようになり、4月当科再入院。画像上両肺の転移は増加増大し、肝両葉のHCCも不変~やや増大していたが、門脈本幹~左右一次分枝のPVTTは軽度縮小し、門脈左枝が一部再開通していた。低血糖に対し糖液補液、呼吸不全に対し酸素及び塩酸モルヒネ投与等の対症療法を中心に全身管理を行ったが、呼吸不全にて死亡した。剖検で肝両葉の腫瘍は組織学的には大索状に増殖する中分化型肝細胞癌であった。非癌部は慢性肝炎の状態であった。なお、経過中の低血糖とインスリン低値、腫瘍の進展の速さなどから肝細胞癌によるIGF-IIの産生が疑われたが、免疫組織化学では明らかに出来なかった。今回我々は腫瘍随伴症候群として低血糖と高コレステロール血症を呈した肝細胞癌の1剖検例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 肝細胞癌, 腫瘍随伴症候群