セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
118:偶発性低体温症に合併した虚血性大腸炎の1例
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演者 |
中村 太造(熊本リハビリテーション病院 消化器科) |
共同演者 |
多田 修治(済生会熊本病院 消化器病センター), 神尾 多喜浩(済生会熊本病院 病理) |
抄録 |
症例は95歳、女性。高血圧の既往はあるが腹部手術歴や便秘の既往歴、下剤の常用歴なし。2006年1月5日午前8時頃、家族が一人暮らしている団地を訪ねたところベットの横でうつ伏せに倒れているところを発見、救急車にて当院へ搬送された。来院時、意識レベル低下(JCS100)、直腸温30.8℃、血圧92/触診、脈拍55/分、SpO2 99%(5L酸素マスク)、全身の細かいふるえと両側足趾皮膚の黒色への変化を認めた。心肺、腹部所見は異常なかった。入院後、手術室のウォームブランケットによる加温と微温湯による胃洗浄にて復温を図り、ドーパミン使用などによる全身管理行った。入院時の血液・生化学検査では、GOT 311、GPT 77、LDH 1142、CK 13581(BB2%、MB10%、MM88%)の逸脱酵素の著明な上昇を認めた。また、トロポニンT陽性で心筋梗塞合併も疑われたが、心エコー上は壁運動異常は認めず、ショック状態による急性冠症候群と診断された。第2病日には健忘は残るものの意識は清明化、循環動態も安定した。しかし、同時期に黒色水様下痢便を認めたために、第3病日目に上・下部内視鏡検査を行った。上部内視鏡検査では、十二指腸球部に軽度の発赤を認めるのみであったが、下部内視鏡検査では、S状結腸に縦走の発赤、びらんが認められた。びらん部からの生検組織では、表面上皮剥離、びらん、腺管上皮細胞の変性、脱落が見られ虚血性大腸炎と診断した。尚、同時期での糞便の細菌学的検査では有意な菌の検出は認めなかった。その後第14病日目の下部内視鏡検査では病変は消失し、正常腸管となっていた。虚血性大腸炎の発生機序として、腸管血流低下などの血管側因子と便秘などによる腸管側因子が大きく関与していると言われている。今回の症例では、便秘症状なく、心臓虚血の合併症がみられたことより低体温症による腸管血流低下が主原因と考えられた。偶発性低体温症に合併した虚血性大腸炎は比較的稀であり、文献的考察を加えて報告する。 |
索引用語 |
虚血性大腸炎, 偶発性低体温症 |