抄録 |
症例は生来健康な59歳男性。既婚者であり海外渡航歴はない。H18年11月初旬から腹痛・下痢症状あり近医受診し急性腸炎と診断され整腸剤を処方され帰宅。自宅にて経過観察していたが38度台の発熱が持続したため当院内科に紹介され精査加療のために入院となった。血液検査では白血球14380/μlとCRP 28.5mg/dlと炎症所見高値を認め、同時にAST 88U/l,ALT 114U/l,LDH 239IU/ml,ALP 665IU/ml,G-GTP 231IU/mlと肝胆道系酵素の上昇を認めた。腹部超音波検査では肝S8に高エコーと低エコーの混在した径9cm程のSOLを認め、造影CTではSOL辺縁に増強効果を認めた。以上の所見から細菌性肝膿瘍と診断しSBT/CPZの投与を開始したが治療抵抗性であった。そのため経皮経肝的肝膿瘍ドレナージを施行したところ内容物はチョコレート様で悪臭が無く、細菌性肝膿瘍よりもアメーバ性肝膿瘍を疑わせる所見であった。そこで Metronidazoleの投与を開始したところ順調に炎症所見は低下を認め全身状態も回復し、腹部超音波検査でも膿瘍の縮小傾向を認めた。膿瘍の培養検査では一般細菌・抗酸菌・赤痢アメーバを含め結果は陰性であったが血清抗アメーバ抗体(FA)は200倍と陽性であり、以上の検査結果と臨床経過よりアメーバ性肝膿瘍と診断した。患者はその後Metronidazoleの内服を終了し外来にて経過を観察中であるが、膿瘍は引き続き縮小しており増悪傾向は認められない。今回我々は、海外渡航歴のない非同性愛者に発症したアメーバ性肝膿瘍の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。 |