セッション情報 一般演題

タイトル 180:

肝内結石症に合併した肝inflammatory pseudotumorの1例

演者 重政 有(佐世保中央病院 外科)
共同演者 清水 輝久(佐世保中央病院 外科), 柴田 良仁(佐世保中央病院 外科), 梶原 啓司(佐世保中央病院 外科), 碇 秀樹(佐世保中央病院 外科), 菅村 洋治(佐世保中央病院 外科), 國崎 忠臣(佐世保中央病院 外科), 米満 伸久(佐世保中央病院 病理)
抄録 肝のinflammatory pseudotumor(IPT)は原因不明の肝内の充実性腫瘤で画像上は肝内胆管癌や悪性腫瘍の肝転移巣との鑑別が必ずしも容易でない。今回、肝内結石症に合併した肝IPTの1例を経験したので報告する。症例は69歳、女性。虫垂切除術の既往歴あり。心窩部痛を主訴に近医受診後精査加療目的で平成15年5月30日紹介入院。入院時、心窩部に圧痛あり、筋性防御なし。入院時検査成績はWBC 9700、CRP 17.0 mg/dl、GOT 41 IU/L、GPT 38 IU/L、ALP 312 IU/L、γ-GTP 118 IU/Lと軽度の炎症反応と胆道系酵素の上昇を認め、腫瘍マーカーはCA19-9 40.9 U/mlと軽度高値、CEA、AFP、PIVKA-IIはいずれも正常範囲内であった。超音波検査で胆嚢内には最大径1.6cmの胆嚢結石、肝S5、7、8に肝内結石を認め、肝S5には高、低エコーが混在する径4.5cmの腫瘤様陰影を認めた。肝内胆管の拡張はなかった。腹部CTでは同部位に不均一に淡く濃染されるlow density areaを認め、腹部MRIではT1強調像で低信号、T2強調像で高信号の腫瘤を認めた。血管造影では血管増生を認め、濃染されていたが、encasementは明かでなかった。ERCPでは左右肝管合流部から末梢にかけて壁の硬化像を認め、部分的に狭窄像を認めた。以上から、肝悪性腫瘍の術前診断で拡大肝右葉切除、胆嚢摘出術を行った。腫瘤は単発性で径6.2cmの黄色調の部分と灰白色調の部分が混在する柔らかい結節病変であった。組織学的には好中球浸潤を伴う小膿瘍形成が多発し、この膿瘍を取り囲むように著明なxanthogranulomatous lesionが形成されていた。悪性所見は認めなかった。以上の所見から肝内結石症に合併した肝IPTと診断した。術後、創部の感染を認めたが第29病日に軽快退院した。肝IPTは悪性腫瘍との鑑別診断が困難な疾患であるが、画像で辺縁の造影効果を認める場合や炎症を伴う場合などは肝IPTも念頭におき、診断、治療方針を検討する必要があると考えられた。
索引用語 inflammatory pseudotumor, 肝内結石症