セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸-症例報告3

タイトル 消P-444:

血清サイトメガロウイルスIgM抗体陰性、antigenemia陰性で診断が困難であったサイトメガロウイルス感染性腸炎の一剖検例

演者 尾方 信也(健康保険鳴門病院・外科)
共同演者 田上 誉史(健康保険鳴門病院・外科), 片川 雅友(健康保険鳴門病院・外科), 坂東 儀昭(健康保険鳴門病院・外科)
抄録 症例は80代男性。主訴は腹痛、嘔吐。既往歴は10年前から高血圧で内服治療中。来院前日から腹痛と嘔吐あり、来院当日夜になり腹痛、嘔吐増強したため救急車で来院。来院時意識清明。体温36.7度。収縮期血圧55mmHg。腹部は軽度膨隆軟、全体に圧痛を認めたが、反跳痛や筋性防御は認めなかった。血液ガス分析では著名な代謝性アシドーシスを呈していた。血液生化学検査では血清アミラーゼ 2698U/Lと高アミラーゼ血症を認めた。腹部CT検査では腹腔内遊離ガス像を認めず、膵臓に腫大を認めなかった。回腸末端部からS状結腸まで腸管径の拡張を認めた。重症急性膵炎による循環血液量減少性ショックと診断した。重症度スコアは10点であった。ICU入室し5000ml/日の輸液とメシル酸ガベキサート投与を開始した。血清アミラーゼ値は第2病日に4069U/Lと最高値を示し、翌日以後漸減した。第3病日から断続的に水様下痢便を認め、便培養を行ったが病原性細菌を認めなかった。第11病日に下部消化管内視鏡検査施行。回腸からS状結腸まで全周性に下掘れ傾向の強い不整形の潰瘍を連続して認め、直腸RS部で境界明瞭な打ち抜き様潰瘍を認めた。サイトメガロウイルス(CMV)感染性腸炎を疑ったが血清CMVIgM抗体陰性、antigenemiaも陰性であった。病理組織検査結果は核内に封入体を認める細胞を少数認めるが、抗CMV抗体を用いた免疫染色では陰性であった。第27病日に39度台の発熱とショック、呼吸停止あり挿管、人工呼吸開始。静脈血培養でKleb.oxytocaを検出。敗血症性ショックと診断し、エンドトキシン吸着療法、ガンシクロビル投与開始するも、第28病日に死亡した。遺族の同意を得て病理解剖を行った。回盲部から30センチ口側の回腸から回盲部まで、上行結腸途中から下行結腸に全周性の潰瘍を認めたが穿孔は認めなかった。病理組織検査では核内に封入体を有する細胞を多数認め、抗CMV抗体を用いた免疫染色でも陽性。CMV感染性腸炎による敗血症が死因と診断した。
索引用語 サイトメガロウイルス, 感染性腸炎