抄録 |
静脈硬化性大腸炎は静脈硬化による慢性的な虚血性大腸疾患で報告例は少なく、腸閉塞が問題となる症例報告が散見される。今回腸閉塞を繰り返す静脈硬化性大腸炎の一例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。【症例】症例は63歳女性、平成16年ごろよりときどき右下腹部痛や便秘を自覚していた。平成17年5月当科受診。白血球増多・貧血無し、CRP軽度上昇、腹部X線・腹部CTにて盲腸~横行結腸に沿った線状の石灰化像、注腸造影にて同部位の伸展不良・ハウストラの消失を認め、全大腸内視鏡では同部位の粘膜の蒼白化・血管透見像の消失を認めまた小潰瘍が散在しており病変はS状結腸まで軽減しながら連続していた。病変部粘膜生検では粘膜固有層に静脈硬化と単核球の浸潤を認めた。画像所見・病理所見より静脈硬化性大腸炎と診断し緩下剤投与等を行い外来で経過観察としていたが、右下腹部痛や便秘は持続していた。平成17年11月腸閉塞のため入院。イレウス管挿入で改善したが、食事開始後再燃しイレウス管を再挿入し改善した。退院後外来で経過観察としていた。平成18年3月再び腸閉塞を来たし入院。右下腹部に便塊を触知し、血液生化学的所見はCRP軽度上昇を認めるのみであった。イレウス管挿入で改善した。小腸造影・注腸造影を施行したところ明らかな限局性の狭窄は認めなかった。腸閉塞発症時の腹部単純X線ではいずれも上行結腸内の糞便の貯留とニボー形成を伴う小腸ガス像を認めた。【考察】静脈硬化性大腸炎による腸閉塞の原因は上行結腸の糞便貯留が一つ要因となっていると考えられた。 |