セッション情報 シンポジウム2

タイトル S2-005:

自己免疫性膵炎の長期経過中、膵癌の合併が疑われた1例

演者 田口 雅史(産業医科大学 医学部 消化器・代謝内科)
共同演者 中村 早人(産業医科大学 医学部 消化器・代謝内科), 田代 充生(産業医科大学 医学部 消化器・代謝内科), 山本 光勝(産業医科大学 医学部 消化器・代謝内科), 木原 康之(産業医科大学 医学部 消化器・代謝内科), 大槻 眞(産業医科大学 医学部 消化器・代謝内科)
抄録 症例は70歳、女性。2000年10月膵のびまん性腫大を指摘され当科紹介入院となった。IgG 2035mg/dlと上昇を認めたが、各種自己抗体は陰性であった。ERCPでは、下部胆管の平滑な狭窄と主膵管のびまん性thumb printing様狭窄を認めた。膵生検ではT球優位の細胞浸潤が膵管を中心に認められ、膵腺房細胞は萎縮し、間質の著明な線維を認めた。以上より自己免疫性膵炎(AIP)と診断し、PSL30mg/dayから開始したところ、膵の腫大はすみやかに改善し、膵内外分泌機能も改善した。その後外来にてPSLを漸減し、約6ヶ月後一旦中止した。2002年と2003年のUSでは、膵頭部に30mmの限局性低エコー性腫瘤を認めたが、尾側の主膵管の拡張は認めず経過観察された。2005年のUSにて腫瘤径は35mmと増大し、更に尾側の主膵管拡張も伴うようになり、膵癌の合併が疑われたため、発症より5年目第2回目入院となった。2回目入院時IgG 2057 mg/dlと再上昇しており、IgG4も927mg/dlと上昇していたが、腫瘍マーカーの上昇は認めなかった。CT上1回目入院時びまん性腫大を認めた膵は、体尾部を中心に萎縮しており、頭部は限局性に腫大していた。尾側の膵管は7mmと拡張していた。ERCPでは、下部胆管の狭窄を認め、膵管は腫瘤の認められる頭部と更に腫瘤を認めない体部の一部でも不整に狭窄しており、介在部の膵管拡張を伴っていた。以上よりAIPによる腫瘤と考え、PSLを30mg/dayより開始したところ、すみやかに腫瘤は縮小し、2.5mg/dayで維持療法を行った結果、ステロイド再投与から6カ月後に腫瘤はほぼ消失した。その時点で膵は全体に萎縮していた。また、腫瘤の縮小とともにIgGも低下した。今回われわれはAIPの長期経過中、膵癌の合併が疑われた1例を報告した。膵はびまん性腫大から限局性腫大に変化し、膵管も拡張が著明となり、膵癌との鑑別が必要であった。ERCPによりAIPに伴う腫瘤と診断しえた。また、血清IgGが疾患活動性を反映している可能性が示唆された。更に長期経過で膵は全体に萎縮傾向が強くなったことから、AIP自体、多彩な形態学変化を遂げながら進行性の疾患の可能性が示唆された。
索引用語 自己免疫性膵炎, 膵癌