セッション情報 |
ワークショップ1
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タイトル |
W-013:高カロリー輸液療法にて肝障害を生じ、infliximabが著効したクローン病の一例
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演者 |
吉廣 優子(国立病院機構 嬉野医療センター) |
共同演者 |
鶴田 英夫(国立病院機構 嬉野医療センター), 玻座真 博明(国立病院機構 嬉野医療センター), 西山 仁(国立病院機構 嬉野医療センター), 古賀 満明(国立病院機構 嬉野医療センター), 塩澤 純一(国立病院機構 嬉野医療センター) |
抄録 |
抗TNF-α モノクローナル抗体 infliximabが難治性クローン病の治療薬として認可されて以来、クローン病の治療法は大きく前進した。今回、クローン病の治療の基本となる栄養療法の一つである完全静脈栄養療法により肝障害をきたし、治療に難渋していたクローン病に対してinfliximabが著効した一例を経験したので報告する。症例は22歳女性。15歳の時に直腸腟瘻にて発症。大腸内視鏡検査では、多数のアフタ性潰瘍や縦走潰瘍が認められ、生検による病理検査で腫大したlymphoid follicleを伴う著明な炎症細胞浸潤とmicrogranulomaが認められクローン病と診断された。病状が悪化した際に、完全静脈栄養療法施行し、炎症所見は改善したものの、カロリー増加により肝障害が出現、カロリーを減らすことによって肝障害は改善するも、栄養状態改善せず、病状は増悪・寛解を繰り返していた。今回、著名な体重減少・頻回の下痢のため入院。完全静脈栄養療法行うも肝障害が出現し、カロリーを減らし肝障害改善するも、十分な栄養を取れずに病状は改善しなかった。下痢頻回・CDAI 262.7 IOIBD 4点となりinfliximabの投与を開始。投与後は速やかなWBC CRP値の低下、CDAI・IOIBD点数の減少、直腸腟瘻症状の改善、体重の増加、トランスアミナーゼの改善等が認められた。現在、投与後3ヶ月が経過したが症状の悪化は認められていない。infliximabは難治性クローン病の寛解導入に極めて有効な薬剤であることが報告されている。その機序としては腸管局所における抗TNF-α作用による炎症の改善が主であると考えられ、本症例もその機序での改善が考えられる。しかし、本症例では完全静脈栄養療法により肝障害をきたし、治療抵抗性であった。これは、肝臓における代謝障害が考えられるが、infliximabが肝臓において抗TNF-α作用を示し、肝代謝の改善、ひいては全身の栄養状態の改善につながり、クローン病症状の改善に寄与した可能性も示唆される。今後は肝代謝とクローン病の関係について本症例を含めた更なるデータの集積が望まれる。 |
索引用語 |
infliximab, 肝障害 |