セッション情報 一般演題

タイトル 181:

巨大肝嚢胞の一例

演者 田中 智和(佐賀県立病院好生館)
共同演者 河口 康典(佐賀県立病院好生館), 岩根 紳治(佐賀県立病院好生館), 高橋 宏和(佐賀県立病院好生館), 重松 宏尚(佐賀県立病院好生館), 川添 聖治(佐賀県立病院好生館)
抄録 【はじめに】肝嚢胞は通常無症状であり多くは治療を要しないが,大きく症状を有する場合には,外科的治療やエタノールなどの注入療法により嚢胞の縮小化を行う.また,巨大例では感染や出血,破裂などの報告もなされている.今回我々は,圧迫症状を認める巨大肝嚢胞に対しエタノール注入療法を行ない,経過中に嚢胞内感染を来たした後に縮小した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
【症例】82歳,女性
【現病歴】以前より肝腎嚢胞を指摘されていたが,徐々に右季肋部の違和感,圧迫感が増強してきたため,2005年11月15日当院へ紹介となった.腹部超音波検査にて,複数の肝腎嚢胞を認め,その内,左葉内側区から右葉にかけての嚢胞は最大径20cmと非常に巨大で肝内の脈管を圧排しており,治療適応と考えられ,11月28日入院となった.
【入院後経過】11月29日巨大肝嚢胞に対し,透視下に8.5Frドレーンを挿入し計2200mL排液した.その後,エタノールを少量分割注入していったが疼痛が強く,CTにてドレーンの腹腔内逸脱が確認されたため,12月13日10Frドレーンを再挿入した.計1600mL排液後,連日エタノールを注入し計250mL注入した.12月20日で一旦注入を中断したところ,12月23日39.0℃の発熱あり,血液検査上,胆道系酵素の上昇および炎症反応(CRP25mg/dl)を認め,ドレーンより排膿あり,嚢胞内感染と判断した.CPZ/SBT 2g投与を開始し,連日生食500mLで洗浄を繰り返した.炎症反応は徐々に改善し,2006年1月3日ドレーンを抜去した.その後,嚢胞は10cmに縮小し,全身状態も安定したため1月12日退院となった.外来で最終的に嚢胞は6cmまで縮小を認めた.
【考察】肝嚢胞に対するエタノール注入療法は,侵襲が少なく効果の高い治療法として認知されている.本例では,予定量を上回るエタノール注入にても効果は乏しかったが,嚢胞内感染を契機に良好な縮小化が得られ,嚢胞内感染の治癒過程で分泌能を有する内層細胞が障害されたものと推察された.幸い今回は良好な経過をとったが,巨大肝嚢胞ではドレーン留置の長期化により重篤な感染症を来たすこともあり,十分な注意が必要である.
索引用語 巨大肝嚢胞, エタノール注入療法