セッション情報 シンポジウム3

タイトル S3-008:

脂肪肝と肝移植

演者 江口 晋(長崎大学 大学院 移植・消化器外科)
共同演者 江口 晋(長崎大学 大学院 移植・消化器外科), 川下 雄丈(長崎大学 大学院 移植・消化器外科), 高槻 光寿(長崎大学 大学院 移植・消化器外科), 日高 匡章(長崎大学 大学院 移植・消化器外科), 曽山 明彦(長崎大学 大学院 移植・消化器外科), 田島 義証(長崎大学 大学院 移植・消化器外科), 兼松 隆之(長崎大学 大学院 移植・消化器外科)
抄録 生体肝移植においてドナーの脂肪肝は移植の時期、可能性を左右する因子となる。また、レシピエント側でもNASHへの肝移植、肝移植術後門脈閉塞での急性脂肪肝などを経験したので、脂肪肝と肝移植という視点からその関わりを検討した。当科で施行した生体肝移植54例のドナー、レシピエントにて検討した。(ドナー)ドナー年齢は中央値37(20-67)で男女比は27:27であった。術前のエコー、CTにてドナー脂肪肝が疑われたのは6例で、5例に術前肝生検を施行した。1例で30%以上の脂肪肝で術前ダイエットを施行後、生体肝移植を施行。他の4例はmild steatosisの診断でそのまま肝グラフト採取術を施行した。肝生検査未施行1例で別ドナーによる生体肝移植を施行した。術後経過は全例で順調で、肝再生も正常であった。また、門脈血栓を発症したドナー1例に肝生検で急性脂肪肝を確認したが、血腫除去手術にて次第に緩解した。(レシピエント)1例にNASHをベースにO157感染による急性増悪のため生体肝移植を施行した。術後経過は良好で自宅退院したが、外来フォロー中に脂肪肝が再発し、糖尿病、腎機能障害などにて複数外来科でフォロー中である。経過中に脳梗塞を発症したが、機能障害なく緩解した。また、痩身薬によるLOHFに対して生体肝移植を施行した1例でも脂肪肝が発症している。短期的には門脈屈曲による機械的閉塞のため再手術を施行した症例で急性の脂肪肝が発症したが、再手術後は次第に脂肪肝は緩解した。(結語)肝移植領域でもドナー、レシピエントで種々の脂肪肝関連病態に遭遇した。複数科での多角的診療が安全な肝移植のために必要と考えられる。また、急性の門脈閉塞により急性脂肪肝が発症することが明らかとなった。
索引用語 脂肪肝, 肝移植