セッション情報 一般演題

タイトル 112:

経肛門的に挿入したイレウス管より投与したバンコマイシンが著効を示した重症偽膜性腸炎の1例

演者 八坂 成暁(大分大学 医学部 消化器内科)
共同演者 高山 明子(大分大学 医学部 消化器内科), 松成 修(大分大学 医学部 消化器内科), 簀戸 聖子(大分大学 医学部 消化器内科), 小野 雅美(大分大学 医学部 消化器内科), 沖本 忠義(大分大学 医学部 消化器内科), 兒玉 雅明(大分大学 医学部 消化器内科), 佐藤 竜吾(大分大学 医学部 消化器内科), 村上 和成(大分大学 医学部 消化器内科), 藤岡 利生(大分大学 医学部 消化器内科)
抄録 症例は72歳、女性。左変形性股関節症に対し人工関節置換術を施行後、炎症反応遷延したため2006年1月13日よりセフェム系経口抗生剤を投与された。内服4日目より38℃台の発熱、腹痛、頻回の下痢が出現、さらに血圧低下も認め1月19日当科入院となった。入院時便検査にてC.difficile毒素陽性であったため偽膜性腸炎と診断、同日よりバンコマイシン6g/day経口投与開始したが、麻痺性イレウスによると思われる腹部レントゲン上腸管ガスの貯留著明であり、内服後の嘔吐も認めるようになった。入院翌日、炎症反応および腹部症状の改善も認められなかったことから、バンコマイシンの経口投与が無効であり、また敗血症性ショックに伴う急性腎不全により人工透析の必要もあったことから、経静脈的な投与の効果も期待できなかったため、経肛門的投与を考慮し下部消化管内視鏡を施行した。内視鏡観察にて大腸粘膜は盲腸から直腸まで著明な量の偽膜に覆われており、正常粘膜はほぼ見られなかった。内視鏡を経由しイレウスチューブの先端を上行結腸に留置した上で、定期的なバンコマイシンの注入を行ったところ翌日より著明な炎症反応の改善を認めた。以後経過良好で、入院6日目にはチューブを抜去、バンコマイシンも経口摂取出来るようになり、2回目の便検査でもC.difficile毒素陰性、内視鏡的に偽膜も消失したため入院14日目に内服中止とし食事摂取も可能となった。偽膜性腸炎は広域スペクトルの抗生物質投与により腸内細菌の菌交代現象が起こり、異常に増殖したMRSA、Clostridium difficileが原因とされる。治療は原因薬剤の中止とバンコマイシンやメトロニダゾールの経口投与である。本症例のように経口投与によるバンコマイシンの効果が認められなかったため、大腸内に直接投与することで著明な改善が得られた報告は散見されており、文献的考察も含め報告する。
索引用語 偽膜性腸炎, バンコマイシン