セッション情報 一般演題

タイトル 4:

健常人に発症したサイトメガロウイルス胃炎の一例

演者 深水 理恵子(佐田厚生会 佐田病院 胃腸科)
共同演者 頼岡 誠(佐田厚生会 佐田病院 胃腸科), 尾石 樹泰(佐田厚生会 佐田病院 胃腸科), 八尾 恒良(佐田厚生会 佐田病院 胃腸科), 岩下 明徳(福岡大学筑紫病院 病理部), 畠山 定宗(畠山内科胃腸科クリニック)
抄録 症例は52歳女性。H17年12月頃より、全身倦怠感、心か部痛が出現し、畠山内科胃腸科クリニックを受診。肝機能障害と上部消化管内視鏡検査で胃全体にびまん性に小潰瘍、びらんが認められた。生検で核内封入体を認めサイトメガロウイルス(CMV)感染による胃炎と診断され、精査加療目的で当院紹介入院となった。既往歴、生活歴には特記事項なく、身体所見上も異常は認めなかった。採血ではAST 174 IU/l, ALT 221 IU/lと肝機能障害を認め、CT上は脾腫を認めた。ウイルス、免疫学的には、CMV抗体は陽性であり、CMV-IgMの上昇を認めたためCMVによる初感染と診断した。治療はPPIの投与のみで経過観察し、症状は徐々に軽快した。また、PPI投与2週間後の上部消化管内視鏡検査では、体上部から幽門輪にかけて、びまん性に粘膜粗造、ひび割れ様の潰瘍瘢痕、びらんが残存していたが、改善傾向にあった。また、肝機能障害も安静のみで経過良好であり数値は正常化した。ヘルペス科に属するサイトメガロウイルスは、宿主細胞に感染、侵入した後、多くの場合不顕性感染の経過をたどり潜伏感染状態を維持する。成人日本人の約9割以上が感染していると報告されており、宿主が免疫不全状態に陥ると回帰感染を起こし、各々の臓器の病変を生じる。治療は、重症例にはganciclovirの投与が行われるが、骨髄抑制等の重篤な副作用があり、治療の必要性を十分に検討した上で使用しなければならない。自験例では、基礎疾患の治療もしくは経過観察のみで、臨床的に改善を認めており、患者背景、臨床症状、内視鏡所見、血液学的データにより総合的に判断して、慎重かつ迅速に治療法を選択すべきである。自験例のような健常成人に発症したCMV感染による胃炎の報告は少なく文献的考察を加えて報告する。
索引用語 サイトメガロウイルス感染症, 胃炎