セッション情報 一般演題

タイトル 43:

抗凝固薬内服中、内視鏡的に止血し得た粘膜所見に乏しい十二指腸出血の一例

演者 渡邉 顕一郎(多久市立病院 内科)
共同演者 秋山 巧(多久市立病院 内科), 後藤 祐大(多久市立病院 内科)
抄録 症例は73歳男性、平成14年に心臓弁置換術を施行されワーファリン、バイアスピリンを内服中であった。平成17年4月、貧血(Hb 4.9 g/dl)を認めた。消化管出血が疑われるも出血源を同定できず、鉄剤投与でHb 10 g/dl前後へ改善し経過観察されていた。同年5月再び貧血(Hb 5.9 g/dl)を来たしたが、原因不明であった。11月28日倦怠感、息切れを主訴に来院。Hb 6.6 g/dlと貧血を認めた。内視鏡検査を施行するも、上部消化管に血液付着を認めず、絶食で経過をみた。11月30日内視鏡検査を施行したところ十二指腸下行脚に血液の付着が認められた。アタッチメント装着下に十二指腸粘膜を詳細に観察したところ、十二指腸水平脚に湧出性出血を確認した。ソフト凝固(エルベ社製ICC 200)にて内視鏡的に止血し得た。その後、貧血の進行なく経過している。十二指腸出血の原因として潰瘍性、血管性、憩室性、炎症性、腫瘍性病変が挙げられる。今回の出血源は粘膜面の変化が目立たず、微細なangiodysplasiaの存在に加えて抗凝固薬内服が影響したと推測された。本症例の出血源の同定および止血処置に関しては、アタッチメント装着下でのソフト凝固止血術が有効であったが、病変が十二指腸水平脚より以深であればダブルバルーン小腸内視鏡や血管造影などの検査が必要であったと考える。高齢化社会に突入した昨今、抗凝固薬や抗血小板薬を内服する患者は増加しており、本症例のように微細な病変からでも高度の貧血を来たしうる。原因不明とされてきた消化管出血に関してダブルバルーン小腸内視鏡やカプセル内視鏡の普及に伴い、病変を特定できる頻度は増加すると予想される。その止血法の選択肢のひとつとしてソフト凝固止血術は有効と考えられ、アタッチメントを装着することで、病変と一定の距離を保つことができるため良好な視野を確保し、出血点の認識、止血処置に役立つと思われた。
索引用語 十二指腸出血, 内視鏡的止血術