セッション情報 |
一般演題
|
タイトル |
179:肝外重症感染症肝病変による急性肝不全で死亡した成人T細胞白血病の一例
|
演者 |
小澤 栄介(国立病院機構長崎医療センター消化器内科) |
共同演者 |
長山 拓季(国立病院機構長崎医療センター消化器内科), 上平 幸史(国立病院機構長崎医療センター消化器内科), はい 成寛(国立病院機構長崎医療センター消化器内科), 宮里 賢(国立病院機構長崎医療センター消化器内科), 長岡 進矢(国立病院機構長崎医療センター消化器内科), 大畑 一幸(国立病院機構長崎医療センター消化器内科), 阿比留 正剛(国立病院機構長崎医療センター消化器内科), 小森 敦正(国立病院機構長崎医療センター消化器内科), 大黒 学(国立病院機構長崎医療センター消化器内科), 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター消化器内科), 石橋 大海(国立病院機構長崎医療センター消化器内科), 伊東 正博(国立病院機構長崎医療センター病理), 新野 大介(国立病院機構長崎医療センター病理), 吉田 真一郎(国立病院機構長崎医療センター血液内科) |
抄録 |
症例は78歳の男性。2005年9月初めより黄疸,発熱,全身倦怠感が出現。近医で肝機能障害と血小板低下を指摘され9月18日当院に入院した。入院時T.Bil 11.2mg/dl AST 118IU/l ALT 1066IU/l Plt 3.2万/μl PT 47.7%と肝機能障害と血小板減少の増悪が認められた。当初,半年前より服用中の塩酸チクロピジンによる薬物性肝障害を考え内服を中止し経過を観察していたが入院翌日40.8℃の発熱とともに血圧の低下が出現した。血中カンジテック4倍,β-Dグルカン25.95pg/mlと高値であることより重症真菌感染症による敗血症性ショックの発症が考えられた。抗生剤とともに抗真菌薬を投与, 更に肝不全に対してステロイドパルス療法を施行するも症状,検査値ともに改善は認められなかった。肝性脳症による意識障害も顕在化し9月25日死亡した。 病理解剖では肉眼的に下腹部の皮膚,消化管粘膜,腹膜,心内膜などの臓器表面にDICによる出血斑が散見された。腹腔内や後腹膜には成人T細胞白血病(ATL)細胞からなる腫大したリンパ節が観察されATL細胞の浸潤はその他の全身の臓器にも認められた。組織学的には両肺にびまん性にクリプトコッカス性の微少肉芽腫が観察されたが肝内には明らかでなかった。肝内には門脈域へのATL細胞の浸潤と重症感染症に合併する肝障害に特徴的な肝細胞壊死と肝細胞レベルの胆汁うっ滞が認められた。HTLV-1抗体陽性と可溶性IL-2受容体高値(55,500U/ml)は剖検後判明し病理組織学的所見も併せて重症肺クリプトコッカス症を伴ったATLと診断した。 ATLによる肝不全の成因としては血球貪食症候群やATL細胞の直接浸潤などが考えられるが本症例はATLによる免疫不全状態に重症のクリプトコッカス症を発症し,ついで肝外重症感染症肝病変を合併し肝不全で死亡した症例と考えられた。 急性肝不全の救命的治療として肝移植が普及しつつあるが移植の適応を検討する上で本症例のような悪性腫瘍に続発した急性肝不全を早期に除外することは臨床上重要であると思われたので考察を加えて報告する。 |
索引用語 |
肝不全, 成人T細胞白血病 |