抄録 |
【はじめに】胆管癌の発生の原因は現在のところ明らかでないが、胆管の寄生虫の関与も考えられている。【症例】患者は突然の腹痛・嘔吐にて発症し夜間外来受診した。腹部CTにて肝外・肝内胆管の拡張および総胆管下部の狭窄を認めたためERCP施行した。下部胆管に不整な狭窄部位(軸変位を伴う)を認め胆管癌がうたがわれたが、細胞診結果はclass IIであった。同検体よりランブル鞭毛虫が検出されジアルジア症の診断であった。ランブル鞭毛虫は多くの場合十二指腸~小腸に寄生するが、ときに胆道に入り込み胆管炎の原因となることがある。本症例ではメトロニダゾール内服し以後胆汁検査にてランブル鞭毛虫は検出されず陰性化したといえる。再度ERCPを施行したところ下部胆管の狭窄は増悪していた。ENBDチューブ留置後頻回提出した胆汁細胞診にて悪性所見を認めないものの(classII~III)、胆管癌を否定しきれずPpPD施行したところadenocarcinomaの診断であった。患者は海外旅行歴多数(東アジア~東南アジア)、生水も各地で自ら好んで飲むとのことであり、明らかなランブル鞭毛虫感染の時期や場所を限定することはできなかった。【まとめ】今回我々はジアルジア症に合併した胆管癌の一例を経験した。胆管癌発生の原因として肝吸虫の報告が認められるが、ジアルジア症はまだ報告されていない。しかしその機序として慢性的な胆管の炎症が原因となるすれば、今回の症例においてランブル鞭毛虫が炎症をおこし胆管癌の原因となっていることも十分考えられる。 |