セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸-症例報告4

タイトル 消P-448:

腹膜炎にて発症したcollagenous colitisの1例

演者 寺本 祐記(市立島田市民病院・消化器内科)
共同演者 松下 雅広(市立島田市民病院・消化器内科), 末廣 智之(市立島田市民病院・消化器内科), 金山 広和(市立島田市民病院・消化器内科), 森下 宗自(市立島田市民病院・消化器内科), 橘 充弘(市立島田市民病院・病理診断科)
抄録 【緒言】Collagenous colitisは慢性・持続性の下痢が診断の契機となることが多い。我々は腹膜炎にて発症したcollagenous colitisの1例を経験したので報告する。【症例】31歳の女性が下腹部痛を主訴に救急外来を受診した。既往歴は、川崎病、アトピー性皮膚炎、便秘、逆流性食道炎であった。逆流性食道炎に対してランソプラゾールを約2ヶ月前から内服していた。単純レントゲン写真では多量の糞便貯留が疑われ、超音波検査およびCT検査では結腸の浮腫状変化と少量の腹水貯留を認めた。浣腸で大量の軟便を排泄後も下腹部痛は軽快せず、入院となった。子宮附属器炎の可能性も考慮し、婦人科的検査も施行されたが、子宮附属器炎は否定的であった。補液と抗生剤(ピペラシリンナトリウム)の投与で症状は速やかに軽快した。症状軽快後の大腸内視鏡検査では横行結腸を中心に明瞭な辺縁を有する縦走潰瘍を認めた。内視鏡所見よりcollagenous colitisを疑いランソプラゾールの内服は中止した。潰瘍が瘢痕化した時期での生検組織で粘膜上皮下に膠原繊維帯の肥厚を認めcollagenous colitisの確定診断に至った。【考察】Collagenous cotitisは様々な程度の慢性・持続性の下痢が主症状であり、その内視鏡像は異常所見に乏しいことからlymphocytic colitisとともにmicroscopic colitisに分類される。原因として様々なものが示唆されているが、ランソプラゾール内服はその1つである。本症例はランソプラゾールを約2ヶ月間内服した後に発症した。慢性の下痢は認められなかったが、元来の便秘症が症状を修飾していたのかもしれない。内視鏡所見は、特異的な所見がないとされる一方で、本症例のように縦走潰瘍の報告例が増加している。肥厚した膠原繊維帯に起因する大腸壁伸展性の低下や粘膜の脆弱性が推測されており、結果的に腹膜炎に至る場合もあると考えられる。【結語】慢性・持続性の下痢を呈することなく、突然の腹痛・腹膜炎にて発症したcollagenous colitisの1例を経験した。
索引用語 collagenous colitis, 腹膜炎